歯の欠損部の治療3選~放置して起こる7つのリスク~

虫歯や歯周病などで歯を失ってしまった後の対処法をご存知でしょうか。すぐに思いつく治療もあるかと思いますが、実は歯を失った後の治療法には複数の選択肢があります。

歯が抜けたまま放置してしまうと口腔機能の低下や健康上さまざまな問題が生じてしまいます。歯が抜けた後に放置したときに生じるリスクや治療法を詳しく知って、要望をより叶える治療を受けられるようにしましょう。

更新日:2024/02/26

■目次

  1. 歯の欠損部を放置すると起こる7つのリスク
  2. 1.隣の歯が傾く
  3. 2.噛み合う相手の歯が伸びる
  4. 3.噛み合わせが乱れる
  5. 4.咀嚼や発音がしにくくなる
  6. 6.脳への刺激が減る
  7. 7.胃腸への負担が増す
  8. 歯の欠損を補う治療法3選
  9. 1.インプラント
  10. 3.ブリッジ

歯の欠損部を放置すると起こる7つのリスク

歯 欠損 治療

歯が抜けたまま治療せずに放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。見た目が悪いだけでなく、さまざまな健康上のリスクが考えられます。

1.隣の歯が傾く

歯並びがきれいな状態を維持できる要因として、隣同士の歯が接触して支え合う関係にあることが挙げられます。もし、隣の歯が抜けてしまった場合、今まで支え合っていたバランスが崩れてしまいます。
歯が抜けて空いたスペースに隣の歯が傾いてきてしまい歯並びが乱れるだけでなく、歯の傾きが大きくなると食べ物が詰まりやすくなりプラークも溜まってしまいます。

2.噛み合う相手の歯が伸びる

上下の歯が噛み合って接触する歯(対合歯)も、噛み合わせを維持するうえで大切な存在です。対合歯が接触することで歯並びの調和が取れています。
対合歯がなくなってしまうと、欠損して空いたスペースに歯が伸びてきてしまいます。伸びてきた歯は根っこが露出し、根面う蝕(歯の根っこの虫歯)や知覚過敏になってしまうこともあります。

3.噛み合わせが乱れる

抜けた歯の両隣の歯が傾いてきたり、対合歯がなくなって歯が伸びたりすると、噛み合わせが崩れる可能性が高くなります。噛み合わせが変化するとお顔の見た目が悪くなるだけでなく、顎の関節周りの筋肉のバランスも崩れて顎関節症(関節雑音、痛み、開口障害)の症状も出るかもしれません。

4.咀嚼や発音がしにくくなる

歯並びが乱れて噛み合わせが悪くなり、顎の関節や筋肉のバランスが崩れてしまうと、さまざまなお口の機能の低下につながります。
歯がない状態のまま放置していると、食べ物を噛むための咀嚼(そしゃく)能力が低下します。噛めないことで食べられる食品が限られて栄養が偏るほか、残っている歯への負担が大きくなります。

また、前歯が抜けると発音も悪くなってしまいます。
前歯がないところから空気が漏れ、さ行、た行、な行、ら行といった音が明瞭でなくなってしまいます。会話を楽しめなくなることで心理的な負担が増大し、人とコミュニケーションを取ることが億劫になることもあります。

5.歯科治療に影響が出る

歯が抜けてしまったところを放置して両隣の歯が傾いてきてしまうと、歯がない部分の治療を行う際、人工歯をつけるためのスペースが確保できないことがあります。このような状態になると、傾いた歯の治療や噛み合わせの調整に矯正や被せ物などの治療が必要になって複雑・長期化する可能性も考えられます。

6.脳への刺激が減る

食べ物を噛む咀嚼の刺激は五感の情報を脳へ伝達するためにとても重要な役割を果たしています。噛む刺激で脳が活性化されるといわれていますが、歯が抜けると咀嚼能力が衰えて脳への刺激が減ってしまい、認知症のリスクが高まることが懸念されます。

7.胃腸への負担が増す

歯が抜けると食べ物をしっかり噛めなくなります。食べ物を噛み切る、細かく噛み砕くといったことができず、塊が大きいまま飲み込むことになり胃腸への負担が増大し、内臓機能の低下につながることも。

また、よく噛めなくなることで唾液の分泌量も減少し、消化機能も低下してしまいます。
さらに、唾液にはお口の中をきれいに洗浄する働きがありますが、唾液の分泌量が減少すると自浄作用の働きも失われ、虫歯や歯周病、口臭などの原因になります。

歯の欠損を補う治療法3選

歯 欠損 治療

歯を失ったときの治療法は、主にインプラント、入れ歯、ブリッジの3つがあります。

1.インプラント

インプラントはチタンを主としたネジ(人工歯根)を顎の骨に埋め込んで人工歯(被せ物)を装着する治療法です。
手術によって人工歯根を埋め込み、インプラント体と骨と結合させます。結合後、人工歯を装着するのが大まかな流れで、入れ歯やブリッジよりも治療期間が長くなるのが一般的です。

天然歯のような構造をしていて、顎の骨と強固に固定されるので硬い食べ物でもしっかり噛むことができます。入れ歯のバネのように固定するための金具を必要としないので、口元も自然な見た目の仕上がりになります。
ただし、基本的には自費診療となるため治療費が高くなります。

インプラントのメリット
・天然歯のような感覚でしっかり噛める
・残っている歯を削らずに治療できる
・取り外してメンテナンスをする必要がない(セルフケア時)
・つけているときの違和感が少ない
・見た目が自然できれいに見える

インプラントのデメリット
・人工歯根を埋め込む際に外科手術が必要
・自費診療となるため費用が高くなる
・治療期間がほかの治療法に比べて長い
・インプラント周囲炎のリスクがある
・定期的にメンテナンスを受ける必要がある

2.入れ歯

一部の歯が抜けた場合に使用する部分入れ歯は、金属のバネ(クラスプ)を残っている歯に引っ掛けます。総入れ歯は主にプラスチックの床(しょう)とよばれるピンク色の樹脂をお口の中に装着します。公的医療保険の範囲内で入れ歯を作ることができますが、使用できる素材に限りがあるので装着時に違和感があったり、しっかり噛めなかったりといったデメリットがあります。

入れ歯のメリット
・治療期間が短い
・公的医療保険の範囲内での治療法もある
・多くの症例に対応できる
・歯を削らない(入れ歯のお種類によっては削ることもある)

入れ歯のデメリット
・噛む力が弱く天然歯やブリッジ、インプラントには劣る
・装着時に違和感がある
・取り外して洗う必要がある
・バネを引っ掛ける歯に負担がかかる

3.ブリッジ

歯が抜けたところの両隣の歯を削って橋渡しの人工歯を装着する治療法です。しっかり固定されるので強く噛むことができるうえ、公的医療保険の範囲内で治療できるため費用を抑えることができます。ただし、固定源となる土台の歯を大きく削る必要があります。

ブリッジのメリット
・短期間で治療できる
・公的医療保険の範囲内での治療法もある
・入れ歯のような違和感はない
・固定するので取り外す必要がない

ブリッジのデメリット
・固定源となる歯を大きく削る必要がある
・固定源となる歯に負担がかかる
・欠損した歯の本数が多いと対応できない場合がある
・食べ物が詰まりやすくセルフケアが難しい

まとめ

歯 欠損 治療

歯が抜けたまま放置してしまうと、残っている歯が傾いたり伸びてきたりして歯並びが悪くなってしまい、大がかりな治療が必要となる可能性があります。治療期間が長くなるだけでなく費用も高くついてしまうので、歯が抜けたら早めに歯科医院へ行きましょう。

歯が欠損したときの治療法はインプラント、入れ歯、ブリッジがありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。歯科医師と相談し、ご自身に合った治療法を選択してください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。