第47回 公益社団法人
日本口腔インプラント学会・学術大会

インプラント治療が拓く未来~ミート・ザ・フロントランナー~

第47回 公益社団法人 日本口腔インプラント学会・学術大会 第47回 公益社団法人 日本口腔インプラント学会・学術大会

第47回日本口腔インプラント学会・学術大会について

年に1度開催される、日本口腔インプラント学会・学術大会が、2017年9月22日(金)~24日(日)の3日間、仙台サンプラザと仙台国際センターで開催されました。会場には全国から、多くの歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、などの医療従事者が集まりました。
今回、「インプラント治療が拓く未来」というメインテーマのもとサブテーマに「ミート・ザ・フロントライナー」という設定でそれぞれの分野で活躍されている先生方の講演を聴講させていただきました。シンポジウムだけではなく、企業セミナー、モーニングセミナー、ランチョンセミナー、イブニングセミナー、海外招待講演など多数の演題発表が行われました。

下記に、本学会で特に注目を集めたプログラムの一部をご紹介致します。

【シンポジウム1】 20年前のエビデンスは今?
-過去、エビデンスと言われた治療は現在、どのように考えられるか-

【シンポジウム1】 20年前のエビデンスは今?
座長 :
梅原 一浩 先生・日比 英晴 先生
講師 :
春日井 昇平 先生・田中 秀樹 先生・武田 孝之 先生

1,000名収容の大ホールで行われたシンポジウム1「20年前のエビデンスは今?」は、3人の先生が講演されすべて立ち見が出るほどでした。

インプラント上部構造の変遷

講師 :
武田 孝之 先生

インプラント治療は積極的な臨床適用が開始されて日本において30年近く経ち、インプラント上部構造や、過去、現在のエビデンスについて再考し未来のインプラント治療のあり方について述べられました。

治療を行うにあたり、補綴物の構造は作製時と装着後短期間を想定していることが多く、10年使用できれば患者さんは満足すると言われていた時期もあったが、現在は30年以上使用できれば満足するという時代になっていると述べられました。

インプラント上部構造を装着した時から、装着期間が長期になればなる程、患者さんの体の状態は変化し、 60歳で治療したとして、30年後の90歳は、口腔内の変化がないと考えるのは矛盾があるとお話されました。

外来受診する患者さんすべての治療を対象としていたが、現在は、死亡するまでの要介護期間は10年間あり、これを前提として準備しておくことが肝要であると未来を想定して治療する重要性を訴えられました。

患者さんの長い将来を口腔内だけではなく、全身的、環境的なことも含め考えることの必要性について、また、インプラント治療を行う前に欠損した原因を究明し対応することが重要であるとアピールされました。

BACK TO THE BASICS

BACK TO THE BASICS
座長 :
春日井 昇平 先生・江原 雄二 先生
講師 :
井上 孝 先生・柴原 孝彦 先生・堀内 克啓 先生・宮﨑 隆 先生・吉野 敏明 先生

5人の先生が3時間講演され、300席程ある会場は、終始満席状態でした。

今回の講演は、インプラントのポジション、解剖学的なお話、歯周病学のお話などについて、インプラント治療で決して蔑ろにはできない基礎知識を再確認する内容でした。

近年のインプラント治療に関する技術、材料、システム、機器の進歩は著しく、患者さんへのインプラント治療に対する知識も上昇し、インプラント治療の進歩の方向へ目を傾けることが多い傾向にあると述べられました。

歯周治療の原理原則に基づく、インプラント周囲炎の治療

講師 :
吉野 敏明 先生

インプラント埋入後のリスクである、インプラント周囲炎を歯周治療の基礎と重ねて講演されました。インプラント周囲炎の治療は歯周治療をよく理解することが大切であり、歯周病細菌に罹患している場合は、原因を究明し、細菌の除去を行うことの必要性を述べられました。

歯周病の原因の究明をし、侵襲性歯周炎の場合は、免疫の状態とサイトカインの状態が一人一人異なるのでその状態を改善し、侵襲性歯周炎を慢性歯周炎へ持ち込んでから、歯周治療を行うことが大切であると強調されました。 一方、インプラントでは、

  • ・天然歯と同じようにノーサージカルでSRPができるのか。
  • ・感染した所が、再インテグレーションするのか。

という問題点を挙げられました。

インプラント表面には、免疫システムが存在しないため、感染した所の除去、LPSなどの無毒化することが必須です。演者が行っているレーザーを使用した動画を使って説明されました。

【シンポジウム6】インプラント治療における抜歯基準の再考

【シンポジウム6】インプラント治療における抜歯基準の再考
座長 :
原宜 興 先生・坂本 貴司 先生
講師 :
水上 哲也 先生・林 美加子 先生・福西 一浩 先生

インプラント治療を行う前に、天然歯がある場合は、抜歯の判断を行わなければならない事も多く、その診断基準においては、今なお論議の的です。今回のシンポジウムでは、歯周病学、保存修復、歯内療法の各専門医から、抜歯基準について講演されました。

インプラント治療における抜歯基準を再考するー歯周病学の立場からー

講師 :
水上 哲也 先生

インプラント治療が行われるようになり、快適にインプラントを使用している患者さんがいる。しかし、インプラント後の上部構造のトラブルや、インプラント周囲炎など問題点も出てくるようになった。ここ数年インプラント治療は万能ではない状況という問題を挙げられました。

インプラント治療を行う前に、天然歯の余地性に見込みがある場合は歯を残し、余地性がない場合は抜歯になる。その際に、余地性がないと決めている基準は正しいのかということを歯周治療の立場から、抜歯基準の再考について述べられました。

例として、過度の動揺、著しい骨吸収、Ⅲ度の分岐部病変などの場合、即抜歯かというと、さまざまな条件を考慮して歯周治療を行うことにより、歯の保存ができると言われている。歯は口腔内に存在し、噛めないという状態は保存している状態ではないと強調されました。

現在は、余地性の乏しい歯を戦略的に抜歯し、インプラント治療を行うことが多くなっている。一方、再生治療の発達によって歯の寿命も延びてきたと言及されました。
診断を行う際は、デンタルX線やプロービングだけではなく、CBCTで評価をするなど工夫をして適切な治療を行うことで、侵襲性歯周炎など余地性の低い歯も寿命を延ばすことが可能であると述べられました。

また、外科処置の回数や審美性、咬合力の低下などを総合的に判断し、再考することで、どんな歯でも残して患者さんに迷惑をかけてはならないと述べられました。

企業協賛プログラム

企業協賛プログラムは2日間で、ランチョンセミナーは12題あり、テーブルクリニックは2題行われました。

企業協賛プログラム

テーブルクリニック ジーシーガイドシステム長期経過症例から読み解く成功のポイントと“New"インプラントAadva

座長・講師名 :
夏堀 礼二 先生
協賛企業 :
株式会社ジーシー

従来のインプラント治療のワークフローと現在のインプラント治療のワークフローの差について講演されました。

演者の医院では、ガイデットサージェリーのデスクトップスキャナーをインターオーラルスキャナーにかえてデジタルワークフローにしている。そして、シリコン印象で製作したガイドと最新のオーラルスキャナーで製作したガイドの適合性の差について、両者のガイド装着時の写真を用い、オーラルスキャナーの精密さを強調されました。

また、デジタルワークフローの中で、スキャンデーターとCTデータを本部に送り、電話でインプラントの埋入方向や深度などを計画している様子、その製作物を使用したインプラント手術の動画も公開されました。シームレスなデジタルワークフローによって、コミュニケーション方法、正確さ、材料の削減など、これまでのインプラント治療のワークフローの差を感じる講演でした。

ポスター発表

ポスター発表は計100題あり、診査診断、メインテナンス、特異的疾患、偶発病、先進的再生医療など幅広い分野の発表が行われました。
ポスター発表が始まると、発表者の周りには多くの聞き手が集まり、発表者と聞き手との距離が近く、熱心に耳を傾けられている様子でした。

ポスター発表

展示ホール

展示ホール 展示ホール

展示ホールでは、86社の企業展示や販売が行われました。インプラント治療に関係する新製品、新サービスなど最新情報収集のため展示ブースは賑わっていました。

「インプラントネット」をはじめ、インプラント治療後の保証サービスを提供する「株式会社ガイドデント」もブースを出展致しました。歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、学生など幅広くお立ち寄りいただきました。また、遠方からいらっしゃる先生方にも多くお会いすることができました。

第47回(社)日本口腔インプラント学会・学術大会に参加して

今回の学会では、インプラント治療の手技、機器、システムなど、進歩が目まぐるしく治療の正確さ、スピード、患者さんの将来についてなど幅広く進化していっていることを実感致しました。

また、インプラントを埋入するだけではなく、過去のエビデンスや基礎知識を振り返り、新しい知識を組み合わせたり、患者さんの将来を想像しながら、インプラント埋入後のメインテナンスなど患者さんと歯科医院が一緒に作り上げていくものだと思いました。
今回の学会に参加しインプラントネットを通し、インプラント治療の理解と普及に努めて参ります。

レポート:インプラントネット運営部
※講演の発表内容については、当サイトにおいて必ずしも保証するものではございません。