インプラント手術中に起こりうる症状とは?

インプラント治療はインプラント体を骨に埋め込む外科手術を伴うため、患者さんの心身にストレスがかかりやすい治療であるといえます。不安や緊張感から痛みに敏感になったり、心身にストレスがかかることで生じやすいトラブルとその対処法についてご紹介します。

更新日:2020/12/07

■目次

  1. インプラント手術中に起こりうる症状
  2. ■呼吸困難や意識がなくなることについて
  3. 対策1 事前に歯科医師に相談
  4. 対策2 鎮静法を利用
  5. ■手術による痛みについて
  6. 痛み止めが効きにくい方
  7. 歯茎を縫合した方

インプラント手術中に起こりうる症状

インプラント治療は、歯茎を切って顎の骨にインプラントを埋め込む外科手術が必要です。麻酔を使った外科手術のため、患者さん個々の心身の状態によっては、インプラント手術中にさまざまな身体的症状や不安、トラブルが起こる可能性があります。
ここでは、手術中に起こりうる症状・トラブルとその対処法についてご紹介します。事前にどのような場合にどんな症状が起きる可能性があるのか知っておき、対策をして不安を軽減して治療に臨みましょう。

■呼吸困難や意識がなくなることについて

治療に対する緊張や不安、恐怖感が強い場合、麻酔を行った後に頭痛・手足のしびれ・動悸・めまい・呼吸困難、ひどい場合には意識がなくなるなどの症状がおこる場合があります。デンタルショックといい、歯科では起こりやすい偶発症です。


デンタルショックは、歯茎に麻酔の注射を行う際に起こる「針を刺した痛み」や「麻酔薬が注入される圧迫感」、「麻酔に含まれる血管を収縮する作用」によって心拍数が上昇する際に副交感神経が急激に働くことによって起きることなどが引き金となっている場合が多いようです。
麻酔後の動悸については、通常は1分くらいで落ち着くので心配はいりませんが、不安や恐怖感が強いと、呼吸困難になってしまうケースがあります。

対策1 事前に歯科医師に相談

過去の治療で激しい動悸がでたり、気分が悪くなったり、過換気症候群(精神的な不安からくる過呼吸)などの症状が出たことのあ過去の歯科治療で激しい動悸が出た、気分が悪くなった、過換気症候群(過呼吸)になったなど通常とは異なる症状が出たことのある方は、インプラント治療をはじめる前に、歯科医師と治療の進め方についてきちんと相談しましょう。
また、デンタルショックのような症状は、治療上で何か不安な点がある場合に起こりやすいので、何か気になることがあれば、歯科医師やスタッフに伝えるようにしましょう。

※ごくまれに、麻酔薬のアレルギーによって、このようなショックを起こす方もいらっしゃいます。このような場合は、全身管理が可能な総合病院で治療を受けられることをお勧めします。

■歯科麻酔を受けるときのポイント
麻酔中は麻酔をされている事や麻酔をされている部分に意識が向いてしまいがちですが、まずは鼻から深く吸って深呼吸してみましょう。
また、なるべく肩の力を抜き、リラックスすることで歯科麻酔による違和感や不快感を軽減することができます。

対策2 鎮静法を利用

痛みに対して強く不安がある方は、痛み止めの麻酔の前に鎮静法(静脈内鎮静法笑気吸入治療法など)を受けられる場合があります。
鎮静法とは、点滴、または鼻に吸入器をつけ、薬を注入することで緊張や恐怖感が無くなり、心身がリラックスして穏やかな気持ちになる治療法です。
全身麻酔とは異なり、意識はある状態でリラックスするための方法のため、鎮静状態から回復するのが早く、その日のうちに帰宅することができます。

笑気麻酔に関しては小児にも使用できますが、鼻詰まりなどがあれば適用できません。静脈内鎮静法で使用するプロポフォールという薬は卵アレルギーの方には使用できないなどのデメリットもあります。

上記以外の理由によって鎮静法を受けることができない患者さんの場合も、麻酔を行う前に表面をしびれさせて麻酔の針を刺した時の痛みを軽減する方法や、針の太さを考慮することによって痛みを減らすことができる可能性がありますので、歯科医師に相談してみましょう。

■手術による痛みについて

インプラントを埋め込む手術は、歯茎に麻酔を注射してからはじめます。ですので、手術中は、痛みを感じることはありません。手術の途中で痛みを感じた場合には、麻酔の注射を追加することができます。
麻酔は痛みを抑えるもので、骨が削られて響く感覚や押される感覚はなくなりません。


手術後は、2時間ぐらいで麻酔の効果が切れてきますので、痛みを心配される方は処方される鎮痛剤を麻酔が効いているうちに飲むことも一つの手です。手術後の痛みは、そのほとんどが処方される鎮痛剤で緩和される程度です。
痛みが少ない場合は、鎮痛剤を必ずしも飲む必要はありません。

痛み止めが効きにくい方

患者さんの中には処方された痛み止めの服用量では効きにくい方もいます。その際は歯科医師に痛みの程度を伝え、薬の服用量や回数について、新たに指示を受けましょう。
強めの痛み止めを処方されている場合もあり、胃腸や身体に負荷がかかる恐れがありますので、服用量や回数は自己判断で変更しないようにしてください。

歯茎を縫合した方

インプラントを埋め込む手術の後に歯茎を糸で縫い合わせる治療を受けた方は、その違和感が痛みのように感じる場合もあります。抜糸をすれば突っ張り感などの違和感がなくなり、落ち着くことがあります。
糸を気にして舌や指で触ったり、食べ物が頻繁に糸にあたると糸が取れて傷口が開いてしまったり、刺激となって炎症を起こしてしまいますので、気になっても触らないように注意してください。
手術後から4~6日経っても、痛みが弱まらず、強い痛みが続く場合はそのほかの原因が考えられますので、歯科医師に連絡しましょう。

注意!!ぜんそくをお持ちの方へ
過去にぜんそくになったことがある、と歯科医師に必ず伝えましょう。痛み止めの服用薬の中には、ぜんそくを引き起こす成分が入っているものもあります(アスピリン喘息といいます)。
また、呼吸困難や意識を失ってしまった際の対応が変わってくることもありますので、既に治療が終了している場合や、何年も発作が出ていない方も伝えるようにしてください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。