インプラント治療が保険適用になる条件とは?保険診療で行える医療機関は?

インプラント治療は基本的に自由診療で行われ、保険が適用されません。しかし、特定の条件を満たす場合に保険適用となるケースもあります。この記事では、インプラント治療の保険適用の条件を解説します。治療に関する疑問や不安がある方は、ぜひご一読ください。

更新日:2025/05/27

■目次

  1. インプラント治療は保険が適用されないの?
  2. インプラント治療が保険適用になる条件
  3. 顎骨や歯槽骨の欠損
  4. 上顎の欠損
  5. 下顎の欠損
  6. 先天性疾患による顎堤形成不全
  7. 先天的な歯の欠損
  8. インプラント治療を保険診療で行える医療機関の条件
  9. 保険診療と自由診療の違いとは?
  10. 自由(保険外)診療って?
  11. インプラント治療はなんで高額なの?
  12. 1.手術でコストがかかる
  13. 2.どんな手術が行われるの?
  14. 3.人工歯の作製でコストがかか
  15. まとめ

インプラント治療は保険が適用されないの?

インプラント治療は基本的に保険が適用されず、自由診療で行われます。

平成24年4月(2012年)より、病気や事故で広範囲にわたって顎の骨を失ってしまった場合に、国が定めた条件を満たせば「インプント義歯治療」が保険適用されるようになりました。

しかし、適用対象は非常に限られており、歯を失う主な原因である「歯周病」と「虫歯」なら保険適用外です。

参考:アクサ生命保険株式会社

インプラント治療が保険適用になる条件

インプラント治療を保険適用で受けるには、以下の条件に該当する場合です。ご自身が該当するか、チェックしてみましょう。

顎骨や歯槽骨の欠損

・腫瘍、顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)、外傷などによる広範囲な顎骨欠損(※歯周病や加齢による骨吸収を除く)
・骨移植等で再建された顎骨欠損(がくこつけっそん)

上顎の欠損

・連続した4歯以上の顎骨欠損
・上顎洞(じょうがくどう)や鼻腔への交通が認められる顎骨欠損

下顎の欠損

・連続した4歯以上の歯槽骨欠損(しそうこつけっそん)
・下顎区域切除(かがくくいきょくじょじゅつ)以上の顎骨欠損

先天性疾患による顎堤形成不全

・外胚葉異形成症や唇顎口蓋裂などの先天性疾患
・顎堤形成不全(顎の骨がやせている方)の診断

先天的な歯の欠損

・連続した3分の1顎程度以上の歯の欠損(外胚葉異形成症など)
・6歯以上の先天的部分無歯症、または前歯・小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全(埋伏歯開窓術が必要な場合)
・歯科矯正後の状態を含む連続した3分の1顎程度以上の歯の欠損

このような限られたケースにのみ保険適用され、歯周病や加齢による顎の骨の吸収(痩せ細った)による歯の喪失などは対象外となっています。

参考:東京女子医科大学 歯科口腔外科

インプラント治療を保険診療で行える医療機関の条件

下記の条件をすべて満たし、国から認められた施設であれば、インプラント治療を保険診療で受けることができます。

・病院(入院用のベッドが20床以上ある施設)にある歯科または口腔外科であること、下記のどちらかに該当する歯科医師が、常勤で2名以上配置されていること

・歯科または口腔外科で5年以上の治療経験がある、または、3年以上のインプラント治療経験がある常勤医師が2名以上配置されていること

・当直体制が整備されていること

・国が定めている医療機器や医薬品などの管理が整備されていること


この条件をすべて満たし、インプラントを保険診療で受けられる施設としては、歯科大学病院や規模の大きな病院の歯科・口腔外科などがあげられます。

「どの病院に行っていいのかわからない」「この治療は保険適用の対象となるのか」などの悩みや疑問があれば、お近くの歯科医院やかかりつけの歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

保険診療と自由診療の違いとは?

保険診療と自由診療の違いを簡単に紹介します。

・注意点
保険で受診するには、健康保険などの公的医療保険に加入し、医療機関で月毎の保険証の提示が必要です。

自由(保険外)診療って?

治療の必要な歯を削って見た目の良い被せ物を入れたいなど、より高度な治療を求める場合には、保険診療適用外の自由(保険外)診療が対象となります。

自由診療は、保険適用されないため、全額自己負担で治療を受けます。セラミックの被せ物や歯列矯正などで主に見た目の向上を目的とするような治療は、保険診療の対象外となるので自由診療となります。
→ただし、噛むなど機能を改善する治療の場合、医療費控除の対象になります。高額療養費制度、医療保険の対象にもなることがあります。

インプラント治療はなんで高額なの?

インプラント治療は自由診療で行われ、コストも時間もかかる治療です。天然歯のような見た目の被せ物を入れて、かみ合わせも良くなるように繊細な調整が必要とされるためです。

1.手術でコストがかかる

外科手術が必要なため、細菌感染を起こさないために、治療環境を整え、麻酔科医のモニタリングなど、細心の注意を払いながら行われます。

2.どんな手術が行われるの?

・インプラントを埋め込む手術
・骨を増やす手術


※顎骨の量が少なく、そのままではインプラントを埋め込むことができない場合に、前処置として行われる手術です。

3.人工歯の作製でコストがかか

インプラントの上に装着する最終人工歯の作製をする際、、噛み合わせが問題なく、見た目の良いものを入れるため、通常より少し時間をかけて行います。

まとめ

インプラント治療は基本的に保険適用外で、自由診療として提供されます。2012年から、特定の条件(顎骨欠損や先天的疾患など)の場合に保険が適用されていますが、歯周病や虫歯による原因の場合は対象外です。
保険適用で治療を受けるには条件を満たす施設での治療が必要です。施設は、大学病院や大規模病院の歯科・口腔外科です。インプラント治療への疑問は、かかりつけの歯科医師に相談しましょう。

「この治療は保険適用の対象となるのかわからない」などの悩みや疑問もあれば、かかりつけの歯科医師に一度相談することをお勧めします!

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。