金属アレルギーとインプラントの関係

インプラント治療は複数の部品を組み合わせて、見た目や噛む機能を回復させる治療法です。使用する部品は金属成分も含まれており、体質によっては治療を受けたことで金属アレルギーを引き起こす、または症状が重くなる可能性も否めません。ここでは、インプラントと金属アレルギーについてご紹介します。

更新日:2021/12/02

■目次

  1. インプラント治療では金属を使うの?
  2. 注意!チタンアレルギーを持つ方もいます
  3. 金属アレルギーの仕組み
  4. もし、インプラント治療後にチタンアレルギーがでたら…
  5. 記事監修

インプラント治療では金属を使うの?

インプラントは、顎の骨に埋め入れる「インプラント体人工歯根)」と、失った歯の代わりとなる「上部構造」、それらインプラントと上部構造を連結する「アバットメント」の3つのパーツで主に構成されています。

インプラント体はほとんどの歯科医院がチタン製のものだけを取り扱かっているため、金属を使用することになります()。上部構造とアバットメントは金属か非金属のジルコニアのどちらかを選択することができます。

現在、厚労省で認可されているインプラント体は、医療用グレードチタンのみですが、海外では非金属であるジルコニア製のインプラント体が販売されています。患者様の同意があれば、歯科医師の責任の下でインプラント製品の個人輸入及び使用が認められているため、すべて非金属材料を使ったインプラント治療を国内で実施しているところもなかにはあるようです。

注意!チタンアレルギーを持つ方もいます

チタンは、歯科以外の医療(ペースメーカー、骨折治療用の固定ボルト、人工関節など)でも応用され、金属の中でもアレルギーが出にくく、身体に対して有害な作用を及ぼしにくい特徴をもっています。

しかし、ごく稀に金属アレルギーの症状が出てしまう方もおられるようです。過去にアクセサリーなどでかゆみや湿疹などの皮膚トラブルの経験がある方は、治療を受ける前に歯科医師に伝えておきましょう。歯科医院によっては、治療後に金属アレルギーの反応がでることを避けるために、院内でパッチテストや採血などのアレルギー検査を実施したり、皮膚科で検査を受けるよう指示したりするなど、状態を確認してからインプラント治療を行うところもあるようです。 

金属アレルギーの仕組み

唾液や汗などの体液と金属が繰り返し接していると、金属がイオン化され、体内のたんぱく質とくっつくことがあります。そうすると体内の免疫システムが反応し、これを排除することが必要だと認識して、アレルギー性を持つようになります。その後、再び同じ金属イオンが取り込まれた場合に、アレルギー反応が起こり、皮膚や粘膜の破壊が生じるといわれています。また、金属アレルギーは、過去に経験がなかった方でも、体調の影響によって、ある日突然発生することもあるようです。

さらに、お口の中は次のような特徴があるため、金属のイオン化が起こりやすい状態だといわれています。

・ 唾液があること
プラークからでる酸によって露出しやすいこと
・ 噛むことによって金属が磨耗すること

もし、インプラント治療後にチタンアレルギーがでたら…

治療後にチタンによる金属アレルギーが出た場合、パッチテストなどの検査を行います。チタンが原因と判明したら、原因を除去、つまりインプラント体を取り除く治療を受けなければ、症状は治まらないでしょう。除去した後は、失った歯の部分を入れ歯やブリッジによる補綴治療で修復することが多いようです。

最も多い金属アレルギーはニッケルです。矯正のワイヤーにも含まれているため、注意が必要です。チタンは、ニッケルやクロム、銀、パラジウム、水銀などと比べると、金属アレルギーを起こしにくいといわれています。金属アレルギーについて気になる方は、歯科や皮膚科を受診し、医師に相談しましょう。 

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。