治療前に知っておきたい!公的医療保険の適用と自費診療について

歯の治療には公的医療保険が適用される治療と適用されない治療(自費診療)があります。公的医療保険が適用される治療と自費診療の治療の違いを知ることで治療の選択肢が増えるかもしれません。ここでは公的医療保険適用で受けられる治療と自由診療の治療の違いをご紹介します。

更新日:2021/12/02

■目次

  1. 保険診療と自由診療
  2. この治療って保険診療?自由診療?
  3. 歯の神経を取らない場合の治療
  4. 歯の神経を取った場合の治療
  5. 歯を失った場合の治療
  6. 歯科治療の特徴

保険診療と自由診療

歯科医院で受ける歯の治療は、公的医療保険が適用される保険診療と自由(自費)診療に分けられます。公的医療保険が適用される治療と適用されない治療の違いはなんでしょうか。

そもそも保険診療って何?

>>保険診療と自由(保険外診療)についてはこちら

この治療って保険診療?自由診療?

主な歯科治療の中で、公的医療保険が適用される治療と自由診療になる治療をまとめました。どちらの治療が適しているかについては、お口の状態や患者さんによって異なります。歯科医師による検査と診断を受け、よく相談しましょう。

歯の神経を取らない場合の治療

虫歯や欠けた部分が小さい場合
保険診療例:コンポジットレジン充填など
自由診療例:セラミック、ダイレクトボンディングなど

虫歯や欠けた部分が大きい場合
保険診療例:保険適用の金属を使用したインレー、アンレー、クラウン、レジンインレーなど
自由診療例:セラミックインレー、ゴールドインレー、ジルコニアインレー、レジンインレー(保険で使えない材料などを利用)など

※虫歯や欠けた部分が小さい場合
虫歯を取り除き、形を整えた後、天然歯と同じ色合いの材料を詰める方法。治療回数は約1回。
※虫歯や欠けた部分が大きい場合
形を整えて歯型を取り、被せ物を作製する。治療回数は約2回。

歯の神経を取った場合の治療

前歯(左右前から1~4番目の歯)の被せ物・差し歯

保険診療例
・硬質レジン前装クラウン
・硬質レジンジャケットクラウン
・CAD/CAM冠(2020年9月から前歯も適用されました)

自由(保険外)診療例:

・オールセラミッククラウン
・ハイブリッドセラミッククラウン
・メタルボンド
・フルジルコニアクラウン
・ジルコニアセラミッククラウン

奥歯(臼歯部)の被せ物・差し歯

保険診療例
・保険適用金属のクラウン
・CAD/CAM冠(条件によって前から4番目~6番目の歯まで)

自由(保険外)診療例:

・オールセラミッククラウン
・ハイブリッドセラミッククラウン
・メタルボンド
・ゴールドクラウン
・フルジルコニアクラウン
・ジルコニアセラミッククラウン

歯を失った場合の治療

ブリッジ

保険診療例:
・硬質レジン前装クラウンブリッジ(前から4番目の歯まで)
・保険適用金属のクラウンブリッジ

自由(保険外)診療例:

・オールセラミッククラウンブリッジ
・ハイブリッドセラミッククラウンブリッジ
・メタルボンドブリッジ
・ゴールドクラウンブリッジ
・ジルコニアセラミッククラウンブリッジ
・フルジルコニアブリッジ

入れ歯

保険診療例:
・床が全てプラスチック素材、クラスプ(バネ)が金属

自由(保険外)診療例:

・金属床義歯
・マグネット義歯
・ノンクラスプデンチャー
・インプラント義歯

歯科治療の特徴

コンポジットレジン充填

■コンポジットレジン

素材 : レジン(プラスチック)

メリット
・歯に近い色合いが再現できる
・公的医療保険が適用されるため費用の自己負担額が少ない

デメリット
・食べ物の色素やプラークが付きやすい
・経年劣化により変色する
・割れることがある

銀歯(インレー)

■銀歯(インレー)

素材 : 金銀パラジウム合金

メリット
・レジンインレーに比べ強度があるため割れにくい
・公的保険適用されるため費用の自己負担額が少ない

デメリット
・時間が経つと銀歯が腐食しやすく、そこから再び虫歯になるおそれがある
・歯ぐきに変色が見られることがある

硬質レジン前装冠

■硬質レジン前装冠

素材 : 主に金銀パラジウム合金の表面にレジン(プラスチック)を貼り付けたもの

メリット
・歯に近い色合いが再現できる
・前から4番目の歯まで公的医療保険が適用されるため費用の自己負担額が少ない

デメリット
・レジンの部分は着色やプラークが付きやすい
・割れたり・欠けたりすることがある
・レジンの部分は経年劣化により変色する
・歯ぐきに変色が見られることがある

硬質レジンジャケット冠

■硬質レジンジャケット冠

素材 : すべてレジン(プラスチック)でできている被せ物

メリット
・歯に近い色合いが再現できる
・金属アレルギーの心配がない
・前から4番目の歯まで公的医療保険が適用されるため費用の自己負担額が少ない

デメリット
・着色しやすい
・プラークが付きやすい
・経年劣化により変色する
・強度がないため、割れる可能性が高い

ゴールドインレー・クラウン

素材 : 金合金(金を主成分として複数の金属を混ぜたもの)

メリット
・天然歯と近い硬さのため、適度なすり減りがあり、歯に馴染みやすい
・金属が腐食することがない

デメリット
・金合金なので見た目が悪い
・費用の負担が大きい

オールセラミックインレー・クラウン

■オールセラミックインレー・クラウン

素材 : 陶材(セラミック)。金属は一切使わない。

メリット
・変色しにくい
・金属アレルギーの心配がない
・艶があり、自分の歯の色調を再現することができる

デメリット
・衝撃に弱く、割れる可能性がある
・費用の負担が大きい

ハイブリッドセラミックインレー・クラウン

■ハイブリッドセラミックインレー・クラウン

素材 : 陶材(セラミック)とプラスチック。金属は一切使わない。

メリット
・変色しにくい
・金属アレルギーの心配がない
・自分の歯のような色調が再現できる
・オールセラミックより柔らかさがある

デメリット
・経年的に、艶がなくなる
・割れる可能性がある
・費用の負担が大きい

メタルボンド

■メタルボンド

素材 :金属を土台とし、 歯の表面相当部に陶材(セラミック=ポーセレン)を焼き付ける。
金属を使用しているので、透明感や色調はオールセラミックより劣る。

メリット
変色することがほとんどない
金属を使っているので強度がある

デメリット
歯ぐきに変色が見られることがある
透明感や色調がオールセラミックに比べて劣る
費用の負担が大きい

ジルコニアセラミッククラウン

■ジルコニアセラミッククラウン

素材 : ジルコニアを土台とし、歯の表面相当部に陶材(セラミック)を焼き付けたジルコニア(人工ダイヤモンド)。金属は一切使わない。

メリット
変色することがほとんどない
金属アレルギーの心配がない
艶があり、自分の歯のような色調が再現できる

デメリット
費用の負担が大きい
強度があるが、セラミックが割れる可能性がある

ノンクラスプデンチャー

素材 : ナイロン系・ポリエステル系の樹脂。金属のクラスプ(バネ)を使用しない

メリット
金属のクラスプを使わないので、見た目や機能性を追及できる
薄くて軽いので、違和感が少ない

デメリット
費用の負担が大きい
クラスプ(バネ)の固定力が金属に比べて弱い

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。