インプラント治療をしたらMRIは撮れない? ~できる・できない、注意点~

インプラントがあるとMRI撮影ができなくなり、人間ドックや健康診断に影響が出るという噂を耳にする事がありますよね。 本当にインプラントが入っているとMRI撮影ができなくなるのか? インプラントがMRIに及ぼす影響や、MRIを撮れる?撮れない?、撮る場合の注意点についてご紹介します。

更新日:2021/12/09

■目次

  1. インプラント治療のほとんどはMRI撮影が可能
  2. インプラントに磁石を付けている場合は要注意!
  3. なぜインプラント治療後にMRIを撮れないと思われているのか
  4. インプラント治療前、MRI撮影前に相談しましょう

インプラント治療のほとんどはMRI撮影が可能

ほとんどの場合、インプラント治療を受けた後でもMRI撮影が可能です。

インプラント治療は、主にチタン製のインプラント体をあごの骨の中に埋め込み、そこに同じくチタンでできたアバットメント(支台部)を取り付け、その上にプラスチックやセラミックの歯を被せています。

インプラントに使われている金属は、金属の中でもチタンやチタン合金が用いられています。
チタンはMRI撮影をしても画像診断に影響を及ぼすことはありません。

なぜチタンやチタン合金はMRI撮影時にも問題がないのかについては、以下で詳しくご紹介します。

インプラントに磁石を付けている場合は要注意!

上記で“ほとんどの場合”と書いたのは、インプラントに磁性体(磁性金属)が使われている場合には、注意が必要となるためです。

インプラント治療の中には、「磁性アタッチメント」を取り付ける方法があります。
これは、インプラントと入れ歯を併用したもので、総入れ歯の使いにくさ(外れやすさ)を解消するインプラントオーバーデンチャーと呼ばれる治療方法です。

具体的には、あごの骨に2~4本のインプラントを埋め込み、キーパーと呼ばれる磁性体を取り付けます。
そして入れ歯にも磁石を取り付けることで、キーパーと入れ歯がくっつきあってぴたっと固定されるという仕組みです。

インプラントオーバーデンチャーは、インプラントの治療本数が少なく済むなどのメリットがある一方で、磁性体を用いているためにMRI撮影などに影響が出てしまいます。

というのも、MRI撮影は、強力な磁場と電波を利用する検査です。
磁性体のキーパーをインプラントに取り付けていると、磁場が乱れてMRI撮影の画像に影響します。

具体的には画像の歪み・乱れが見られます。
検査部位がお口の中や脳など頭部の場合にはより画像への影響が大きく、検査ができないケースもあります。

また、MRI撮影時に発生する磁場によって、キーパーの位置が動いてしまう可能性もあると言われています。
強力な磁場に置かれたキーパーは磁力が弱まって入れ歯に対する吸着力が低下する、発熱の危険性があるといった研究報告もあり、MRI撮影時には取り外すことが推奨されています。

なぜインプラント治療後にMRIを撮れないと思われているのか

「インプラントは金属を埋め込む治療であり、MRIは金属製の物があると撮影できない。だから、インプラント治療後にはMRI撮影ができない」

というイメージを持っている方も少なくありません。
しかし実際のところ、MRI撮影に影響を及ぼすのは磁石に対してくっついたり離れたりといった反応をする磁性体金属のみです。

インプラントの素材であるチタンは非磁性材料であり、MRI撮影は問題なく行えます。
金歯や銀歯といった詰め物や被せ物があってもMRI撮影ができるのと同じで、インプラントがある辺りに小さな影が写る場合があるものの、安全性や画像診断における問題はありません。

インプラント治療前、MRI撮影前に相談しましょう

MRI撮影についてご不安がある方は、インプラント治療前に歯科医院にて相談しておくことをおすすめします。
基本的にはチタンといった素材を使って治療が行われますが、磁性体を使うことがないか、インプラント治療後にMRI撮影が問題なくできるか、といった点を確認しておきましょう。

また、すでにインプラント治療が終わっている場合には、MRI撮影前に歯科医院に念のため問題がないかどうか確認しておくと安心です。
インプラントのメーカーや素材についても聞いておくと、MRI撮影を行う技士に正確な情報を伝えることができますよ。

インプラントオーバーデンチャーなどによりインプラントに磁性体が用いられている場合には、MRI撮影時には磁性体部分のみ一旦取り外すことが推奨されています。
MRI撮影前に歯科医院にて相談してみてください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。