■目次
記事のポイント3つ
・前歯1本のインプラント治療にかかる平均費用は40万~50万円。
・前歯のインプラントが難しい理由は、前歯部分の顎の骨が薄く骨の厚みを増す手術が必要。
・インプラント治療を受ける前に、歯茎や顎骨の状態や使用材料(アバットメントや人工歯)の確認が大切。
前歯をインプラントにする費用はいくら?
前歯を1本インプラントで治療した場合の平均費用は400,000円~500,000円です。平均費用に術前検査や手術費用、人工歯の費用なども含まれます。
2024年11月 株式会社メディカルネット調べ
前歯をインプラント治療する際の費用シミュレーション
前歯をインプラント治療する際の費用をシミュレーションします。
インプラント治療費の例(前歯1本を失った場合)
・術前検査、診断料…15,000~50,000円
(内訳:お口の診査・レントゲン・CT撮影各種・歯型模型の作製・お口の写真撮影・診断料)
・インプラント手術費用…150,000~350,000円
(内訳:インプラント体(フィクスチャー)・アバットメント・服用薬・技術料・その他設備、機器使用代)
・補綴(人工歯)費用…50,000~200,000円
(内訳:人工歯・連結するネジ代、または接着するセメント代、人工歯費用)
費用総額…400,000~500,000円
上記以外、次の費用が別途発生することもあります。
・治療期間中の仮歯代…5,000~20,000円
・抜歯…5,000~8,000円
・初診料、再診料、医学(指導)管理料など…150~1,500円
(保険治療を受けるついでの診査の場合、公的医療保険が適用(3割負担)されることもあります。自由診療の場合、抜歯であれば保険と比較すると5倍以上高い費用の負担も考えられます。)
2024年11月 株式会社メディカルネット調べ
前歯のインプラントが難しいといわれる原因とは?
前歯のインプラントが難しいといわれる原因は主に次の3つです。
前歯はあごの骨が薄いといわれているため
前歯は顎の骨や歯茎が薄いことが多く、骨の厚みを増やす外科手術を併せて行うことも多いです。骨の厚みを増やす外科手術を受ける場合は合併症のリスクがありますが、外科手術を受けない場合、見た目や機能に影響が出ることもあります。どのような治療にも、メリットとデメリットがありますので、治療を受ける前に歯科医師から説明を受けるようにしましょう。
歯茎が下がりやすいため
前歯の歯茎は下がりやすい傾向です。加齢や不適切なブラッシング、歯周病なども影響を及ぼします。歯茎退縮は、インプラント治療後に目立ちやすくなるため、事前に歯茎の健康状態をしっかりと確認し、必要に応じて歯茎の再生治療を行うことが大切です。
高い審美性が求められるため
前歯のインプラントの場合、自然な仕上がりが求められます。インプラント治療においても、前歯のインプラントは自然な色合いや形が求められ、周囲の歯や歯茎と調和するように作られます。
前歯をインプラント治療する際の注意点
前歯をインプラントで治療する際にチェックしておきたい点を紹介します。
見た目が気になる
歯茎の厚みには個人差があり、生まれつき薄い人もいます。そのような場合、インプラント治療で一般的に使用される金属製のアバットメント(※)を接続すると、金属が透けて、歯茎が黒ずんで見えることがあります。
歯科医院によっては、金属製のアバットメント以外に、白いジルコニア製のものを選択できるところもあります。白いジルコニア製は、歯茎から透けて見えることがないため、見た目に影響を及ぼすことが少ないです。
※アバットメントとは…顎の骨に埋めた「インプラント(人工歯根)」と、歯冠の代わりとなる「上部構造(人工歯)」を連結するパーツです。
インプラントを埋め込む位置の近くに神経が通っている
上顎洞や下顎管などの組織と近接している場合、そのままインプラント手術を受けると、神経や血管を傷つける恐れがあるため、骨を造る手術が必要となります。
歯科医師の治療方針や技術によって、骨を造らずにインプラント治療を受けられると診断されることもあります。診断結果が不安で他の歯科医師の見解を求めたい場合は、セカンドオピニオンを検討しましょう。
トラブルに対する補償の有無
インプラントの破損や抜け落ちるトラブルが起きた際に、再修復・再手術の費用を、歯科医院または歯科医院と提携している保証会社が負担を約束する「保証制度」を設けているところもあります。保証制度を受けるために、別途費用が必要な場合がありますので、費用の詳細を確認しておきましょう。
インプラント補償の詳細を知っておく
埋め込むインプラント体や人工歯の種類によって、費用が大きく異なります。費用面だけでなく、それぞれの製品の特徴や、トラブルが起こった場合のリカバリー、万が一に備えて治療を受けた歯科医院以外でも治療が可能かを確認し、よく検討しましょう。
別途かかる費用について確認する
インプラント手術中の緊張や恐怖心を和らげるために、点滴をして鎮静薬を投与する「静脈内鎮静法」や、鼻から笑気を吸入する「笑気ガス鎮静法」を行うところもあります。また、インプラント手術後に服用する薬代が別途必要な場合もあります。インプラント手術代に含まれている場合と、別途費用が発生する場合がありますので、受ける前に確認しておきましょう。
まとめ
どんな治療が患者さん自身にとって適しているのかは歯科医師の診断を受けなければわかりません。治療を希望する歯科医院で検査を受け、詳しく相談してみましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。