インプラントの耐用年数は?入れ歯やブリッジよりも長く使える?

「インプラント治療を検討しているが、治療費が高く悩んでいる。長持ちして結果的に安く済ませられるかもしれないけれど、インプラントの寿命ってどのくらい長いの?」そんな疑問をお持ちの方も、いらっしゃるかもしれません。 インプラントの耐用年数は、基本的に入れ歯やブリッジより長い傾向にあります。今回、インプラントの一般的な耐用年数、インプラントの寿命が短くなる原因、耐用年数を延ばす方法を詳しく解説します。

更新日:2025/10/06

■目次

  1. 記事のポイント3つ
  2. インプラントの一般的な耐用年数は10~15年程度
  3. 入れ歯やブリッジよりもインプラントの方が耐用年数が長い
  4. インプラントの耐用年数が短くなる原因は5つ
  5. ①メンテナンスが不足している
  6. ②インプラント周囲炎になってしまう
  7. ③喫煙している
  8. ④歯ぎしりや食いしばりの悪癖がある
  9. ⑤品質の良くないインプラントを使っている
  10. インプラントの耐用年数を延ばす4つの方法
  11. ①歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける
  12. ②セルフケアを徹底する
  13. ③禁煙・減煙する
  14. ④歯ぎしり・食いしばり対策をする
  15. まとめ

記事のポイント3つ

・インプラントの耐用年数は一般的に10~15年で、適切なケアで20年以上使える場合もある
・入れ歯やブリッジに比べ長持ちしやすいが、保険適用外で費用負担が大きい点に注意。
・定期メンテナンス、丁寧なセルフケア、禁煙などがインプラントの長持ちポイント。

インプラントの一般的な耐用年数は10~15年程度

インプラントの寿命とは、インプラントを入れて撤去までの期間のことを指します。インプラントの一般的な耐用年数は10~15年程度とされているため、インプラントの寿命も同程度の期間になると考えられます。

ただし、インプラントの寿命の長さは、埋入後のメンテナンスの有無などによって大きく変わります。適切なケアを続けた場合。20年以上インプラントを使用できることもある一方、ケアが不十分で質の悪いインプラントの場合、1~2年で撤去に至るケースもあり、インプラントの寿命はかなりの個人差があると言えます。

参考:日本歯科医師会

入れ歯やブリッジよりもインプラントの方が耐用年数が長い

一般的に、インプラントは入れ歯やブリッジよりも耐用年数が長くなっています。ブリッジの平均的な寿命は7年、入れ歯の寿命は3~5年前後とされ、耐用年数が10~15年程度のインプラントが理論上は長く使用できます。

一方、入れ歯とブリッジは健康保険を適用し治療できる可能性が高いですが、インプラントは基本的に保険適用外となるため、患者さんの金銭的負担が大きくなる点に注意が必要です。

ただし、インプラント治療を受ける際には医療費控除を受けられるケースが大半です。自分が医療費控除の対象となるか、事前に担当医に確認しておくことをおすすめします。

→インプラント治療における医療費控除の適用条件や、実際にどれくらいの金額が返ってくるのかなどについては「【2025年度版】インプラント治療の医療費控除額どれくらい?いくら戻ってくるの?」の記事をご覧ください。

インプラントの耐用年数が短くなる原因は5つ

インプラントの耐用年数は比較的長い傾向ですが、特定要因によって寿命が大きく縮む可能性があります。この項目では、インプラントの寿命を縮める原因となり得る5つを具体的に紹介します。

①メンテナンスが不足している

インプラントの寿命は十分なメンテナンスが行われているか否かで大きく変わります。インプラント治療は終了したら放置せず、定期的に歯科医院で検診を受ける必要があります。通院をさぼると、インプラントの寿命を大きく縮めるでしょう。

また、日頃の歯磨きを怠ったり、ブラッシングが雑だったりしても、歯茎の炎症が起きてインプラントの寿命を短くします。インプラントを可能な限り長く使いたいなら、メンテナンスとセルフケアはしっかりと取り組みましょう。

②インプラント周囲炎になってしまう

インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の組織(歯茎や歯槽骨)に炎症が発生する病気です。インプラント周囲炎は歯周病に似ている特徴があり、症状の進行でインプラントの脱落にもつながってしまうため、インプラントの寿命を縮めます。

インプラント周囲炎は、歯周病原細菌の感染で起き、歯周病患者さんの場合、インプラント治療前に歯周病治療が必要です。

また、お口の中の衛生状態を良好に保つことがインプラント周囲炎の予防にもなるため、日頃のセルフケアはやはり重要です。

③喫煙している

タバコに含まれるニコチンは血管収縮作用があるため、喫煙習慣がある人は顎の骨や歯肉へ血液・栄養・酸素などが十分に行き届かなくなります。その影響で、インプラント手術後の傷の治癒が遅れたり、入れたインプラントと骨が想定通りくっ付かなく、インプラントの寿命にも影響を与えます。

さらに、喫煙は唾液の分泌量を減らすとされています。唾液には口腔内細菌の繁殖を抑える作用があるため、唾液の減少はお口の中の細菌増殖を招き、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

これらの理由から、喫煙習慣がある人はそもそもインプラント治療を受けることができないケースも多いです。

④歯ぎしりや食いしばりの悪癖がある


歯ぎしりや食いしばりの悪癖がある場合、歯に大きな力が加わります。天然歯は「歯根膜」と呼ばれる、歯への力のダメージを分散させてくれる膜が歯と顎骨の間に介在しますが、インプラントには歯根膜がないため、歯ぎしりなどによる衝撃を顎骨でダイレクトに受けます。

インプラントに強い力が繰り返されると、インプラントの寿命にも大きな悪影響が及びます。そのため、強い歯ぎしりや食いしばりがあるを起こしやすい人は、治療後にマウスピースを装着するなどして、インプラントへのダメージを最小限に抑えます。

⑤品質の良くないインプラントを使っている

インプラントにはさまざまな種類があり、製品によって耐久性も変わります。インプラントの中には「格安インプラント」と呼ばれる安価な製品もありますが、値段だけを判断材料として決めるのは得策とは言えません。

格安インプラントの中には国内未承認の種類もあり、骨との結合が不十分だったり、破損リスクが高いなど、質の悪いものもあります。

しっかりと問診やカウンセリングが行われない、保証期間が極端に短いなども、インプラントを長持ちさせたいのであれば避けましょう。

インプラントの耐用年数を延ばす4つの方法

インプラント治療前後に特定の方法を取ると、インプラントの耐用年数を延長することが可能です。インプラントを長持ちさせるために効果的な方法は、以下です。

①歯科医院で定期的にメンテナンスを受ける

インプラントを長く使い続けるために、定期的なメンテナンスが重要です。具体的には、治療終了後も歯科医院で定期検診を受け、担当医に装置の状態やお口の中の衛生環境を確認してもらうことによって、インプラントを良好な状態に保ちやすくします。

また、インプラント周囲炎をはじめとする何らかのトラブルが発生しても、定期的に歯科医院で検診を受ければ、早期発見・治療が可能です。これらの理由から、定期的なメンテナンスはインプラントの寿命の延長に大きく貢献してくれます。

②セルフケアを徹底する

丁寧に日々ブラッシングを行ったり、マウスウォッシュも使用したりといった、セルフケアも、インプラントを長持ちさせるうえで非常に重要です。

日頃のブラッシングを丁寧に行って歯の表面についた汚れを落とし、デンタルフロスや歯間ブラシなど歯と歯の間にある汚れを除去するのに適した器具を使うと、お口の中をより清潔な状態に保てます。

細菌増殖に伴うインプラント歯周炎を防ぐために、日々のセルフケアを徹底しましょう。

③禁煙・減煙する

喫煙はインプラント手術の結果に悪影響を及ぼすだけでなく、手術後の経過にもマイナス効果をもたらします。インプラント治療を受ける前に禁煙を成功させ、吸うタバコの本数を減らせれば、インプラントが長持ちする可能性を高めるでしょう。

さらに、喫煙は免疫力を低下させ、手術の傷口からの感染や、インプラント周囲炎といった症状を引き起こしやすく、インプラント治療が終わった後も、禁煙・減煙を継続させる必要があります。

具体的な禁煙方法ですが、禁煙外来を積極的に活用するのがおすすめです

④歯ぎしり・食いしばり対策をする

歯ぎしりや食いしばりのある人の場合、埋入したインプラントに継続的に衝撃が加わります。それによってインプラントの寿命が縮むことを避けるため、歯ぎしり・食いしばりによって歯やインプラントが受けるダメージを最小限に食い止めることが重要になります。

歯ぎしりや食いしばりは就寝中に発生することが多いため、就寝中にマウスピースを装着することによって、歯が受けるダメージを軽減することが可能です。

また、同じく歯ぎしりの原因となりやすいストレスをうまくコントロールしたり、矯正治療によって噛み合わせを調整するなどの方法もあります。

まとめ

インプラントの一般的な耐用年数は10~15年程度で、入れ歯やブリッジよりも長持ちしやすいとされています。ただし、メンテナンスやセルフケアが不十分である、喫煙・歯ぎしり・食いしばりがある、質の悪いインプラントが使用されている場合、インプラントの寿命を縮めてしまうことにつながってしまいます。

インプラントの耐用年数をできるだけ長くするためには、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けたり、日々のセルフケアを丁寧に行ったり、禁煙を成功させたりすることが重要になります。

また、インプラント治療後に違和感がある場合、早めに歯科医院に足を運んで診察を受け、インプラント歯周炎などのトラブルに備えましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。