発見された口腔内カンジダ症のメカニズムとは?
| Dental Tribune 提供記事

ロンドン(英国)/ピッツバーグ(米国):最近発見されたペプチド毒素は、口腔内に口腔内カンジダ症が発生する原因となることが英米の研究者チームによって確認された。これはCandidalysinと呼ばれる、真菌カンジダ・アルビカンスによって産生される物質で、口の内側の細胞に穴を開けて免疫応答を惹起することが分かり、同チームが「Science Immunology *1 」誌上で研究論文を発表した。

※1:「Science」の出版元である米国科学振興財団(AAAS)が発行する免疫学研究のジャーナル

口腔内カンジダ症の背景にある機序を発見

▲ カンジダ・アルビカンスはヒトの口腔内および性器日和見感染の病原体である。

次にヘルパー免疫細胞が他の無害な真菌の菌糸を攻撃することで痛みを伴う感染症を引き起こす。
 
「意外なことに口腔内真菌の免疫がどのように働くのかはほとんど知られていません」と、共同筆頭著者であるピッツバーグ大学医学部のSarah L. Gaffen氏が語った。「さらに、今までは、カンジダが健康な人において侵襲性感染しない理由は不明でした」。
 
この研究で同チームは、実験室の培養皿で培養したヒト口腔上皮細胞と、カンジダを経口感染させたマウスを併用し、Candidalysinが最も重要であることを示そうと試みた。キングス・カレッジ・ロンドンのJulian Naglik教授によって2016年に初めて発見されたこの毒素は、ヒトに感染する真菌の中から同定された初のペプチド毒素である。口腔内の感染機序におけるその役割を理解することは、口腔内カンジダ症やその他真菌感染の治療向上につながると同チームの科学者らは言う。さらに彼らは、真菌感染は全世界で数百万に上るにもかかわらず、抗真菌ワクチンはいまだ市販されていないとも付け加えた。
 
「我々の研究は、体内の障壁部位における免疫防御ネットワークに関する生きたヒントです。この知見は最終的に抗真菌薬ワクチンの設計に生かすことができます」と、先行研究でCandidalysinを発見した、キングス・カレッジ・ロンドン歯学部のJulian Naglik教授は語った。米国国立衛生研究所(NIH)*2からの巨額な助成金を受けて、Gaffen氏とNaglik教授は、近い将来、経口免疫におけるCandidalysinのシグナル伝達の役割をさらに調査すると発表した。
 
口腔内カンジダ症は、最もよくみられる口腔内真菌感染の1つである。外用薬で治療可能ではあるが、疼痛を引き起こすことも多く、痛みで飲食が困難になる。口腔内カンジダ症は、特に乳児や乳児以外にも免疫不全患者、つまりHIV/AIDS患者、義歯装着者、化学療法薬や移植臓器の拒絶反応を抑制する薬剤などの免疫抑制剤使用者などでは、他の重篤な真菌感染の原因にもなり得ると考えられている。
 
この論文は、11月3日に「Oral epithelial cells orchestrate innate Type 17 responses to Candida albicans through the virulence factor Candidalysin」のタイトルで「Science Immunology」誌にて発表されている。

※2:アメリカ合衆国にある医学研究の拠点機関。研究支援や医学情報の交流の促進などを行う

by Dental Tribune International