SPTの常識が変わる!
GUIDED BIOFILM THERAPY大会
レポート

2017年7月9日(日)にGUIDED BIOFILM THERAPY大会が品川グランドホールで開催されました。今回の講演「SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)の常識が変わる!GUIDED BIOFILM THERAPY」大会は、アジアで初の大会であったため、多くの歯科医師、歯科衛生士が日本全国から集まり活気に溢れていました。大会では海外の先生方、日本の先生方が話され、ランチョンセミナー(ホームケアにおけるブラッシングについての講演)が設けられるなど、内容の濃い講演大会でした。

エアーポリッシングのインプラントメインテナンス

エアーポリッシング(歯面清掃)とは、パウダーに空気圧がかけられ、ハンドピースのノズルから水とともに噴射し、歯面に付着したバイオフィルムやステインを清掃・除去する方法です。インプラントを長期使用する上で重要なことは、周囲のバイオフィルムをコントロールすることであり、そのためには、患者様のホームケアと定期的なメインテナンスの両方が必要不可欠になります。

インプラント周囲炎に移行する前の、インプラント周囲粘膜炎の時点で早期発見し、処置していくことが大切です。その手段として、バイオフィルムの除去、ホームケアの重要性を患者様が理解していかなければならないと述べられました。

上部構造のメインテナンス

ホームケアでは難しいインプラント歯頚部にエアーポリッシング(※1)を行い、バイオフィルムの除去が可能です。インプラント上部構造の形態はそれぞれ違うので、形態や、インプラント体がどの位置に入っているか、という把握が大切です。頬舌的、近遠心的にせり出している上部構造や、インプラントとインプラントとの間が近い上部構造はメインテナンスが難しい部位ですが、そういった部位にも有効であると述べられました。

上部構造のバイオフィルム除去

深いインプラント周囲溝のメインテナンス

インプラント歯周粘膜炎や深いインプラント周囲溝がある場合、ポケット用の専用チップでバイオフィルムの除去を行い、併せてホームケアを確実に患者様に指導してほしいと述べられました。そして、術後の炎症部位の確認、ポケットの深さ、出血や排膿の有無を確認することが、インプラントのケアをする上で大切であると述べられました。

軟素材のポケット用のチップでバイオフィルムの除去

インプラント体のメインテナンス

インプラント体表面をメインテナンスする際、インプラント体は傷がつきやすく、研磨が難しいため、傷がつくと、そのまま菌の格好の住処となり、メインテナンスの際は傷をつけずに注意して行う必要性があると強調されました。術前のインプラント体表面(※1)は100%バイオフィルムで覆われた状態です。エアーポリッシングを行いバイオフィルムを除去したインプラント体表面(※2)は、表面性状に変化はなく、さらに拡大したインプラント体表面(※3)でも、表面性状に変化はないと述べられました。

インプラント体へのエアーポリッシング

エアーポリッシングで天然歯のメインテナンス

歯肉縁上のプラークコントロール

まず最初に、問診、視診、触診をしっかりと行った後、プロービングを行います。小窩裂溝、矯正装置周囲、歯肉退縮部、歯列不正部、CEJ周囲、補綴物周囲、クラック、露出した根分岐部などはリスクの高いところになるため、プロービングでの出血も見逃さないように行います。プラークが48時間程で酸や毒素を産生するようになるため、炎症による出血は少なくとも2~3日間はブラシが当たってないということになります。染色液で染まったところをみる場合も同じような点に考慮するようにと述べられました。

根面のプラークコントロール

清掃前の根面は、多くのバイオフィルムを観察することが可能です(※1)。一方、清掃後の根面は、セメント質に損傷がなく、バイオフィルムの除去が可能です(※2) 。

歯肉縁下は、目で見えない縁下根分岐部、バイファーケーションリッジ、など、歯肉縁上と比較するとアプローチしにくい部分ですが、エアーポリッシングを使用することで、セメント質にもやさしくよりスピーディーで効率的に施術が行えると述べられました。

清掃前後の根面の拡大図

エアーポリッシングとラバーカップポリッシングの比較

エナメル質への影響

エアーポリッシングを10秒当てた歯面(※1)と、ラバーカップポリッシングRDA27、回転数3,000r.p.mの歯面の結果(※2)では、 500倍に拡大して観察するとエナメル小柱に差があります。5,000倍に拡大して観察するとエアーポリッシング後の歯面(※3)にバイオフィルムは観察されませんが、ラバーカップポリッシング後の歯面(※4)では、バイオフォルムが残存している状態が起こりうると述べられました。

ラバーカップポリッシングとの比較

セミナーを受けて感じたこと

リコールメインテナンスでは、縁上・縁下のプラークを清掃・除去をしますが、その際、歯面や補綴物を傷つけていないか、と再考することが望ましいでしょう。また、エアーポリッシングによるメインテナンスは、ステイン除去や分岐部の清掃で、歯質への侵襲だけでなく、術者の体力的な疲労も考えられるため、患者様にも、術者にもメリットがあると思いました。

効率的にバイオフィルム除去ができ、歯面にやさしく、また、患者様のチェアタイムの効率的なメインテナンスが可能になると思いました。

レポート:インプラントネット運営部
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