47歳女性さん(広島県)の相談

カテゴリ:喫煙

インプラントのオールオン4の手術をして、1ヶ月になります。
タバコはよく無いと聞きましたが、現在止められなく時々吸っています。
やはりしっかり自覚をし、タバコは完全に辞めた方が良いのでしょうか?あごの骨も少なく治療もして貰ったので、タバコは吸っても関係無い、と言う方と止めた方が良いと言う方と色々でわかりません。
納得出来る対応とカツ!を入れて下さいませ。お願いいたします。

47歳主婦さん

ご質問ありがとうございます。
かねこ歯科インプラントクリニックの金子 茂です。


喫煙とオールオンフォーの関係についての質問依頼です。


オールオンフォーは、4本のインプラントを埋入して上顎の全部の歯をささえます。「歯ぐき付きの上部構造」になります。

「歯ぐきなしの上部構造」にするためには、6本以上のインプラントが必要と考えられます。

また、6本以上のインプラントを埋入しても、骨が薄い場合は「歯ぐき付き」の上部構造になります。


この「人工の歯ぐき」の部分が問題になります。通常、「人工の歯ぐき」は、プラスチックでできています。このため汚れがつきやすいのです。
また、4本のインプラントで12本の歯をささえているため、インプラントブリッジの間隔が長く、ブリッジ底面の面積が広くなります。歯ブラシや歯間ブラシを使った掃除は、難しくなるのです。

陶材やハイブリッドレジンという高価な材料も使えるのですが、インプラントの埋め込み自体に費用がかかっていますし、違和感があるときに陶材は修正が難しくなります。
埋め込み料金以上の上部構造の費用は、現実的ではないとも言えます。


私がオールオンフォー治療をはじめてから、5年くらい経過しました。

治療後に経過が悪い方は、(1)喫煙者(患者自身が解決できること)、(2)はぎしりをする方(上部構造の改良や埋入本数の増加で、歯科医が解決できる)、(3)問い合わせても来院しない方(多くは男性)(約束を守らない患者自身に問題)です。

喫煙はもっとも大きい経過不良の要因であり、患者さん自身で解決できることだと思っています。


長期経過をみていると、術後1年を経過したころから、喫煙者の方がインプラント周囲の骨の吸収が大きいと感じています。

「術後1年以上の経過が悪い」というのは、オールオンフォー手術自体は喫煙者も非喫煙者も同様に問題ないが、長期では喫煙者の経過が良くないということです。ニコチンがインプラント周囲に悪影響を及ぼし続けているのです。


「歯ぐき付きの上部構造」の周囲にプラーク(歯垢、バイ菌)が付着した時、喫煙者はそれに違和感を感じにくくなり、掃除を怠ります。
インプラントを埋め込んだ歯ぐきは、ニコチンで抵抗力を失っています。

普通のインプラント治療の「歯ぐきなしの上部構造」の場合でも、「歯ぐき付きの上部構造」ほどではないですが、トラブルは非喫煙者にくらべて多いと感じています。


インプラントの周りの骨がなくなってくると、膿みが出はじめてインプラント周囲炎になり、長期的にはインプラントが脱落する可能性があります。


5年前と違って、今では骨吸収を起こしにくいプラットフォームスイッチングやテーパーコネクションのインプラントが発売され、オールオンフォー治療に使えるようになりました。また、表面性状がより良いインプラントも発売され、オールオンフォー治療に使えます。このようなインプラントを使ってオールオンフォー手術を行えば、経過は良くなるでしょう。

しかし、いくら性能の良いインプラントを使っても、患者さん自身のリスク要因はなくなったわけではありません。


インプラント周囲炎になれば、せっかく残った骨を最大限に利用してオールオンフォーを行ったのに、その骨も失ってしまいます。
3本のインプラントでは、原則オールオンフォーの上部構造は立たなくなります。
今度は、骨造成術を行わなければならなくなります。

そうなると、オールオンフォーの1日治療ではなく、今度は、長期間に複数回の手術を行うことになります。1年半かけての長期治療です。大変なことになります。
また喫煙者では、この骨造成術のリスクも高いのです。オールオンフォー以上の喫煙リスクと思います。

ですから、オールオンフォーを含めて、「インプラント治療を行う方は、禁煙が原則」なのです。


私自身の喫煙についての考えです。
私が歯科大学を卒業して、医科大学病院の口腔外科に入局した25歳のころ、喫煙しようと思ったことがあります。教授をはじめ、口腔外科の先生の多くが喫煙者だったからです。

研修期間中に、麻酔科へ配属されました。麻酔科の医師は、1日中手術室での勤務になります。
大学病院の手術室は10室ありましたが、いつも半分以上が喫煙の問題がある患者で占められており、それを見てびっくりしたのです。

喫煙すると、「お腹や胸、頭を開けられて、ここで手術されるのか!」と感じまして、たばこを吸うことを考えなくなりました。もちろん、麻酔科の医師に喫煙者はいませんでした。


インプラント手術も医科の手術も同じです。喫煙をつづけると、健康を損ね、手術室に入る可能性が高くなるでしょう。

是非、オールオンフォー治療に限らず、インプラント治療をうけるすべての患者さんは、ご自身の健康のために禁煙してください。



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