歯の壊死とは?神経が死んでしまった歯
以前と比べて変色している歯はありませんか? もしかしたら「歯が壊死している」のかもしれません。歯をどこかにぶつけたなどの思い当たるきっかけがなくても、意外と簡単に歯が壊死します。本記事では、歯の壊死の原因や症状、治療法などを詳しく紹介します。
更新日:2025/05/30

■目次
この記事のポイント3つ

・歯の壊死は、虫歯や歯周病、外的衝撃などが原因で神経が死ぬ状態で、歯が変色し痛みを感じなくなることがあります。
・壊死した歯は根管治療で神経を取り除き、消毒・清掃後、根管を封鎖する治療が必要です。
・変色した歯の見た目の治療方法に、ウォーキングブリーチやセラミック治療があり、治療後も変色再発の可能性があるため定期的なケアが重要です。
歯の壊死とは?
歯の壊死とは、正確には「歯の神経の壊死」のことです。
歯の神経は歯科用語では歯髄(しずい)と呼ばれます。歯の中には歯髄腔と呼ばれる空洞があり、歯髄(歯の神経)や血管が通っています。
歯の神経が壊死すると神経として機能しなくなり、歯の痛みや温度(熱い・冷たい)を感じなくなります。
「虫歯を放っておいたら痛みがなくなった」「虫歯を放置していたら治った」と聞いたことはありませんか?
それは、虫歯菌が歯髄へと達し、歯髄が壊死(壊疽)して痛みを一時的に感じなくなったためです。
治ったわけではなく、神経が死んでいるという悪化した状態となっています。
歯の神経は壊死してしまうと元に戻せません。
では、歯の神経が壊死する原因を紹介します。
歯が壊死してしまう原因
歯の壊死が起こる原因はいくつかあります。
重度の虫歯・歯周病細菌が歯の中や外から歯の神経まで到達してしまったことにより歯が壊死するケースです。
根尖病巣と呼ばれる、歯の根の先に膿が溜まる疾患に繋がります。
虫歯や歯周病の早期発見・治療ができれば、歯の壊死を予防する可能性が高まります。
ほか、歯を強くぶつけたなど歯に強い衝撃が加わることでも起こります。
稀に、矯正歯科治療で歯を動かすために強い力が加って歯が壊死することも稀にあるようです。
子供の頃に転倒などで前歯の神経が壊死して被せ物を入れている患者さんは少なくありません。
前歯が永久歯に生え変わる6~7歳頃は小学校に入り活発に運動するため、遊戯・運動中に転んだり他人とぶつかるなどして、前歯に強い衝撃が加わる事故も多く起こるためと考えられます。
「歯の壊死」は割と簡単に起きてしまいます。
歯が壊死している場合の症状は?
歯髄壊死が起こると、ほかの歯と比べ歯の色が変わります。
茶色、グレー、黒といった暗い色に歯が変色していたら要注意です。
ちなみに、歯は着色によって茶色っぽく見えることもあります。
歯医者さんは歯髄壊死による茶色か着色の茶色かはわかる可能性が高いですが、一般の方にはわかりにくいでしょう。
歯が茶色くなって心配な場合は、早めに歯科医院で診てもらいましょう。1歯だけ茶色っぽいのであれば、歯髄壊死の可能性が高いです。
仮に1本だけ着色している場合も、歯科医院で落としてもらうことをおすすめします。
着色だったら恥ずかしいと心配する必要はないので、気軽に歯科医院に行ってみてくださいね。
痛み・しみることがなくなる
歯が壊死すると、痛みを感じなくなります。
熱いもの、冷たいものがしみない、痛みを感じない場合は要注意です。
歯を押したり噛んだりする感覚は歯の神経ではなく歯根膜と呼ばれる別の部位で感じるため、歯の痛みを基準にしましょう。
痛みを感じる歯が今は痛くなくなった、知覚過敏だった歯がしみなくなった、などの場合、歯の壊死の可能性が高くなります。
原因になり得る虫歯は自然に治ることはありませんので、予防には治療が必要です。虫歯が原因の痛みを感じなくなった場合、虫歯がかなり進行している可能性があります。
歯が壊死してしまった場合の治療方法
「いつの間にか歯が変色してしまった」という患者さんは多いです。
歯の壊死を放置していると、顎骨の中(歯の根っこの部分)に膿ができます。
この状態をさらに放っておくと、痛みで抜歯が必要になる可能性が高まり、骨髄炎などに発展して入院することもあります。
将来にわたって長く自身の歯をもたせるには、壊死した神経の治療が必要です。
壊死した歯髄の除去
壊死した歯の神経(歯髄)は元に戻ることはありません。
まず、壊死した歯の神経を歯髄腔(歯の中の空洞)から取り除く「根管治療」を行われます。
壊死した歯の状況によっては数回に分けて除去します。
神経の一部が壊死して、一部がまだ生きている場合は壊死した部分だけを取り除き、残りの神経を保存する治療を少ないですが行われることもあります。
部分断髄法と呼ばれる治療法で、専門医では比較的高い成功率です。歯髄の状態に応じて検討してみましょう。
根管の消毒・清掃
歯の神経を全て取り除いたら、神経の通っていた歯髄腔をきれいにする必要があります。
歯髄腔は歯の根の中も通っており、根の部分の歯髄腔を根管といいます。
壊死したものが入っている場所はきれいではないですよね。神経を取り除いた後も細菌が残っているケースが大半で、お薬を入れる処置が必要です。
歯髄を除去できたら、細菌を繁殖させないよう、まずは根管の消毒・清掃を行います。
根管の封鎖
歯の神経や血管を取り除いた歯髄腔は、からっぽで、専門用語で「死腔(しくう)」と呼びます。
からっぽの空洞のままでは再び細菌が繁殖する・入り込んでしまう可能性があります。
そのため、新たな細菌が根管に侵入しないように、お薬(詰め物)で封鎖をします。
根管の封鎖性が高いほど細菌が繁殖しにくく歯に再び問題が起きにくくなり、結果的に歯が長持ちするとされています。
歯の壊死による変色は白くなるって本当?
歯の壊死の治療が完了しても、一度変色した歯の色は改善しません。
歯髄を取り除く時に血管も一緒に取り除くことになるため、栄養が届かなくなった歯の変色が強まることもあります。
歯の壊死によって変色した歯は、ホワイトニング歯磨き粉や通常の歯科ホワイトニングでは白くすることができません。
歯の壊死による変色を白くする方法でよく行われている2つの方法をご紹介します。
ウォーキングブリーチ
「ウォーキングブリーチ」は、歯の神経の通っていた歯髄腔にホワイトニング剤を入れて白くする方法です。
通常のホワイトニングでは歯の表面からホワイトニング剤が作用しますが、歯の壊死による変色は歯の内側からホワイトニングをすることで白くすることができます。
ウォーキングブリーチでは、壊死した歯髄を除去し、根管の消毒・清掃が完了した根管に、ホワイトニング剤を入れていきます。
1週間ほどかけてじっくりと内側からホワイトニング剤を反応させていきます。
ホワイトニング剤の交換を数回繰り返すことで、徐々に歯が内側から白くなっていき、最後は詰め物で封鎖して治療完了となります。
通常よりも高濃度のホワイトニング薬剤を使用するほか、歯髄腔に材料を入れる技術が必要なため、歯科医院で施術を受ける必要があります。
ウォーキングブリーチは、ホームホワイトニングやオフィスホワイトニングなどの通常のホワイトニングと同様に時間が経つにつれて歯の白さは戻ってしまいます。
そのため、定期的にウォーキングブリーチをしなければいけないのがデメリットといえるでしょう。
セラミック治療
歯が全体的に変色していたり、極端に黒く変色していたりする場合には、ウォーキングブリーチよりもセラミック治療が適しているかもしれません。
セラミック治療の一つは、歯を削ってセラミッククラウンですっぽりと歯を覆う「オールセラミッククラウン」という方法があります。
セラミックを被せることで、自分自身の歯の色を隠すことができます。
また、「ラミネートベニア」という治療法もあります。
これは、歯の表面に薄い貝殻状のセラミック(つけ爪のようなもの)を貼り付けて白く見せる治療です。
セラミックの寿命は10年程度といわれているため再治療が必要になる可能性が高いですが、ウォーキングブリーチとは違い、見た目をずっと白く保つことができます。
セラミッククラウンよりも歯の切削量が少ないのもメリットです。
ほか、一次的に歯に白い塗料を塗る「歯のマニキュア」でも白く見せることができます。
ただし、歯のマニキュアはちょっとした衝撃で剥がれて歯の色が見えてしまったり、ムラになることもあります。
長期間歯の色を維持したい場合、紹介した2つの治療方法が多くとられます。
歯の神経を再生する治療!?
歯髄は壊死すると治らないと紹介しました。ですが、神経を再生する治療「歯髄再生療法」というものもあります。
患者さんの親知らずなどから歯髄の幹細胞を培養し、歯髄を除去した部分に移植するというものです。
移植後、徐々に神経やその周りにある象牙質(ぞうげしつ)が再生していき、歯が壊死する以前のような状態になります。
ただ、必ず治療が成功するというわけではありません。
具体的な成功率は発表されていませんが、高い成功率とはいえないようです。
歯髄の幹細胞の培養の時点での成功率、加えて、移植後の成功率を考えると、まだまだ研究中の治療法といえるでしょう。
また、歯髄再生療法は公的医療保険が適用されません。
成功しても失敗しても自費診療(患者さんの全額自己負担)ですので、行なっている歯科医師とよく相談して治療を検討しましょう。
まとめ
歯の壊死は歯の神経が死んでしまう状態で、虫歯や歯周病、外的衝撃が原因で起こります。壊死した歯は変色し、痛みを感じなくなることが多いです。根管治療が必要で、変色した歯はウォーキングブリーチやセラミック治療で改善可能ですが、治療後も再発の可能性があります。
歯が変色し「壊死しているかもしれない」と感じたら、放置せずに適切な治療を受けることを強くおすすめします。
記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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