上顎洞炎とは?歯性上顎洞炎の原因・症状・治療法を詳しく紹介
上顎洞炎(歯性上顎洞炎)は、上あごの奥歯の上にある空洞「上顎洞(じょうがくどう)」に細菌感染して炎症を起こす疾患です。炎症は虫歯や歯周病、インプラントの埋め込みなど歯科治療が原因で起こることが多く、放置すると症状が悪化する可能性があります。本記事では、歯性上顎洞炎の原因、症状、治療法を詳しく紹介します。歯性上顎洞炎の早期発見・治療の重要性についても解説します。
更新日:2025/05/30

■目次
この記事のポイント3つ

・歯性上顎洞炎は虫歯や歯周病、インプラントなど歯科治療が原因の炎症疾患です。
・主な症状は歯や歯茎の痛み、鼻詰まり、膿の排出です。
・早期治療が重要で、進行すると手術が必要になることもあります。
上顎洞炎(歯性上顎洞炎)とは?

上あごの奥歯の上にある骨の空洞を上顎洞(じょうがくどう)といい、目の下、鼻の横、お口の上にある骨空洞です。上顎洞の中は粘膜で覆われ、顔の左右にあり対称的な形態ですが、人によって形や大きさが異なります。
上顎洞粘膜に細菌が入り込み、炎症が起きた状態を上顎洞炎といいます。口腔を原因に起きたものを歯性上顎洞炎といい、片方だけの鼻詰まりが特徴的です。
歯性上顎洞炎の原因と症状を知ろう!
歯性上顎洞炎の原因と症状を紹介します。
歯性上顎洞炎の原因とは?
上あごの骨が薄く、奥歯の根っこの先端が上顎洞と近接している、または上顎洞に突き抜けている方は、下記が起こりやすい傾向です。
・虫歯や歯周病の治療を受けず放置し、炎症が上顎洞粘膜まで波及した
・抜歯の際、上顎洞粘膜と口腔内がつながり、感染した
※また、治療など人為的理由によって起こることもあります。
・根管治療の器材が上顎洞粘膜を突き抜け、細菌が入り込み感染した
・インプラント治療中に上顎洞粘膜が傷つき、細菌が入り込み感染した
歯科で治療を受けることになりますが、上顎洞炎の状態によっては歯科や十分な医療設備のある大きな病院に加え、耳鼻咽喉科と連携して治療することもあります。
上顎洞炎になるとどこが痛む?
上顎洞炎は、左右どちらかに起こることがあります。主な症状は下記の通りです。痛みが出ることは少なく、黄色い鼻水が出るのが特徴です。レントゲン撮影で異常が発見されることもあります。
上顎洞炎の症状とは?
上顎洞炎では、以下の症状が現れます。
・歯が痛む
・歯茎が痛む
・噛むと痛む
・鼻がつまる(口腔が原因なら片側のみが多い)
・鼻から黄色い膿が出る
・頬に圧迫感がある
・頭痛がある
・発熱している
歯性上顎洞炎の治療法
主に上顎洞炎と原因となった口腔内の治療が同時に行われます。
上顎洞炎の治療
・抗生物質や消炎剤を服用して感染を抑える
・痛み止めの麻酔の注射をして、歯の根の辺りの歯茎を切って上顎洞内の膿を出し、生理食塩水などで洗浄を行う
原因となった部分の治療
・虫歯や歯周病が原因の場合、抜歯などの歯科治療が必要です。根管治療で歯を残せることもあります。
・抜歯が原因の場合、服用薬で感染を抑えながら、自然に抜歯した部分が閉じることを待ちます。穴が大きく、自然に閉じることが期待できない場合は、歯茎を縫い合わせて上顎洞とお口の中の交通を塞ぎます。
治療を受けても症状が改善しない場合、口腔外科や耳鼻咽喉科にて、内視鏡下で上顎洞と鼻腔をつないでいる穴を大きく広げて、膿を出しやすくする手術などを行うことがあります。
歯性上顎洞炎の人がインプラント治療を受ける上での注意点
歯性上顎洞炎の人がインプラント治療を受ける上での注意点を紹介します。
①過去に上顎洞炎の治療歴がある
過去に上顎洞炎になり、治療を受けたことがあると、上あごの骨量が不足している場合に、骨の厚みを増やす「サイナスリフト」の治療が受けられないこともあります。治療前に歯科医師に相談しましょう。
②インプラント治療でのリスクの一つ
インプラント治療での外科手術の際に、下記によって、細菌感染によってインプラント治療が失敗し、治療期間が大幅に延びたりすることがあります。
・インプラントを埋め入れる手術の際に上顎洞粘膜が傷ついた
・インプラントが上顎洞粘膜に入り込んでしまった
・骨量が不足している場合に、骨の厚みを増やす「サイナスリフト」や「ソケットリフト」を行い、上顎洞粘膜が傷ついた
副鼻腔炎を患った状態であれば、インプラント治療期間が延長されます。治療前に歯科医師からメリット・デメリットを納得し治療を進めましょう。
歯性上顎洞炎を放置したらどうなる?
歯性上顎洞炎は放置しても自然に治ることはなく症状が悪化する可能性があるため、できるだけ早い段階で歯科医院で治療を受けることが大切です。
炎症が広がると、顔面の腫れや強い痛みが生じ、膿がたまることもあります。感染が骨や周囲の組織に広がることで、歯を失う原因にもなりかねません。慢性化すると、治療が難しくなり、手術が必要になる場合もあります。
早期発見・治療が症状軽減や回復を早め、健康な状態を取り戻すために重要です。
まとめ
上あごの奥歯の上にある骨の空洞が炎症を起こす「上顎洞炎」は、虫歯・歯周病のような歯の疾患やインプラント治療などが原因で起こることがあります。
症状は、頬付近や歯・歯茎の痛み、鼻水などです。悪化すると、頭痛や発熱などの症状を招くことも歯科だけでなく、耳鼻咽喉科と連携して治療が必要になる場合があります。心当たりのある方は、かかりつけの歯科医院か、耳鼻咽喉科に相談しましょう。
記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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