インプラントの成功率

インプラント治療は外科手術を伴い、失敗の可能性もあるという記事を目にした方は、インプラント治療の成功率について気になるのではないでしょうか。インプラントの成功率はインプラント治療を行う歯科医師の技術や設備、使用するインプラントメーカー、検査項目などさまざまな条件によって左右されるため、歯科医院や治療箇所によって異なります。単純に比較しないように注意しましょう。

更新日:2020/12/07

■目次

  1. 成功率の考え方
  2. 上の歯と下の歯では成功率が異なります
  3. 術後年数によって成功率が異なります
  4. インプラント製造会社の成功率のデータは一つの目安に
  5. インプラントの成功率はどのくらい?
  6. 歯科医院によって成功率の出し方が異なります

成功率の考え方

インプラント治療の成功率について、ホームページやパンフレットなどに記載している歯科医院が多くあります。

単純にインプラント埋入手術の成功率といっても、上顎と下顎、前歯と奥歯では成功率が異なることや歯科医院によって成功率の算出の仕方が異なることもあり、成功率を他の医院と比べる際には、注意が必要です。
また、インプラントを埋め込む手術からどのくらいの期間が経ってから、どの程度問題がなければ成功としているのか、など成功の基準についても各歯科医院によって異なります。

上の歯と下の歯では成功率が異なります

顎の骨の性質の違い

上顎をインプラント治療したときの成功率は、下の歯と比べるとやや劣る傾向にあります。その理由は、骨の質に違いがあるからです。
顎の骨は「皮質骨」と呼ばれる硬い骨が表層にあり、その内側には「海綿骨」と呼ばれる柔らかい骨があります。インプラント治療はこれらの骨のバランスが重要で、どちらかの骨が極端に少なかったり、硬すぎたり、柔らかすぎたりすると、埋め込んだインプラントが顎の骨と結合しにくくなることがあります。

上顎は、柔らかい骨(密度の低い骨)である海綿骨の割合が高い特徴があり、下顎よりもインプラントの結合に時間を要します。さらにその骨の密度が低かったり、その量が少なかったりする場合は、海綿骨の中にある骨を造りだす細胞も少ない状態ですので、インプラントが顎の骨に結合しないこともあるのです。

術後年数によって成功率が異なります

術後年数について

インプラント手術完了時と、術後1年、術後5年、術後10年を比較すると、経過年数とともに成功率が徐々に下がっていく(インプラントがダメになる)ことが一般的です。手術後1年未満のデータであれば、インプラントを埋め込みたてのため、炎症も起こりにくく、当然成績が良いことが考えられます。
記載されている成功率が、術後から何年で割り出したものかわかるデータであれば参考になるでしょう。

>>治療後に起こりうるさまざまな症状 ~手術直後~
>>治療後に起こりうるさまざまな症状 ~治療後半年以上~

【インプラントを長く使うために】

インプラントを長持ちさせるには、歯科医院に定期的に受診し、適切なケアを受けなければなりません。通院を続けることができない場合、インプラントやインプラント周囲にトラブルが発生し、抜け落ちたり、除去しなくてはならなくなる可能性もあります。
患者さん自身の管理不足(通院が途絶えたことがある、現在通院していないなど)によってインプラントにトラブルが起こった場合のデータが成功率に含まれているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

>>メインテナンスを怠るとどうなるの?

インプラント製造会社の成功率のデータは一つの目安に

インプラント製造会社から成功率が出されていることがありますが、その成功率は一つの目安に過ぎません。インプラントのケア方法や、提携している歯科医院での条件などによって数値が左右されるためです。
そのため、成功率が高い同じ製品で治療を行ったとしても、歯科医師の技術力や患者さんのお口や全身、ケア状態によって成功率は大きく変化します。

インプラントの成功率はどのくらい?

上記でご紹介したように、インプラントの成功率は、歯科医院の技術や使用するインプラントのメーカー、患者さんのお口の中や全身の状態、ケアの方法などさまざまな条件によって異なります。
では、インプラントを埋め込む手術を行い、骨とインプラントが結合する確率はどのくらいなのでしょうか?
また、10年後にインプラントが問題なく使えている確率はどのくらいなのでしょうか?

歯学部付属大学病院にてインプラント治療を受けた98名(総インプラント数は262本)を研究した論文によると、
インプラントを埋め込む手術を行い、骨とインプラントが結合する確率は上顎前歯は84.1%、下顎前歯は96.9%、上顎奥歯は78.9%、下顎奥歯は95.9%であり、上顎に比べて下顎は骨とインプラントが結合する確率が高く、前歯に比べ奥歯は結合する確率が低い傾向にあります。
また、10年後にインプラントが問題なく使えている確率は上顎は96.4%、下顎は94.0%と高確率であったことがわかりました。

参考文献:日本口腔インプラント学会誌掲載論文 第15巻 第1号(平成14年3月31日) 口腔インプラントの生存に関する疫学調査:オッセオインテグレーションの獲得と意地から見た評価(2020-11-04)

※ただし、この論文は特定の4種類のインプラントメーカーのインプラントを使用し、1病院に限り行われたインプラント治療による研究結果のため、歯科医院のインプラント治療すべてに当てはまる結果ではありません。

歯科医院によって成功率の出し方が異なります

すべての患者さんのデータが反映しているところもあれば、骨の質が悪かったり、全身の健康状態に問題があったりする患者さんのデータは対象外として、成功率を出しているところもあるようです。
また、その歯科医院で扱うすべてのインプラントのデータではなく、特定のインプラントメーカーの結果だけを集計していることもあります。その他に、何年も受診していない方のデータが含まれており、実際に残存しているかの確認ができない患者さんのインプラントが成功本数として含まれていることもあるようです。

インプラント治療は、チタン製のものが応用されるようになってから、40年以上の歴史をもっています。インプラント製品は今日までに少しずつ進化しながらさまざまな新製品が登場しており、品質が格段に向上しているものもあれば、新しい特徴を付与したことにより製品トラブルを起こすものもあります。
新製品が良いという考え方もあれば、過去のデータが揃っているスタンダードな製品が安心であるという考え方もあり、考え方は個人によってさまざまです。
受ける治療の特徴や選択肢があればその違いなどを把握しておき、納得できる治療法を選択しましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。