ペクトン®を土台とした被せ物(衝撃吸収クラウン)

ペクトン®とは歯科用途に最適な性質を持つ医療用ポリマーで、生体親和性が非常に高い素材です。金属を使用しないため、金属アレルギーを起こす心配がなく、衝撃吸収効果が期待できるためインプラント治療にも適した材料です。

更新日:2020/03/30

■目次

  1. 新素材ペクトン®とは?
  2. ペクトン®の素材の特長は?
  3. ペクトン®を使用したジルコニアの被せ物の特長は?
  4. ジルペッククラウンはインプラント以外の治療にも効果的

新素材ペクトン®とは?

インプラント治療に使用される素材として代表的なものはチタン(金属)やジルコニア(セラミック)ですが、それに次ぐ新しい素材としてペクトン®があります。
歯科用金属やアタッチメント(連結装置)製品で、スイスのCendres+Metaux社から販売されており、2018年、日本でも薬事申請を通過し承認を得て歯科治療に使用することが可能になりました。
医科の分野では頭蓋骨損傷部や人工関節・椎間板などの身体の中のインプラントとしてすでに使用されている素材です。
ペクトン®はポリエーテルケトンケトン(PEKK)という化合物からできていて、プラスチックの一種です。簡単に言うと、日常でよく目にするペットボトルやポリバケツなどの材質の中でも軽量で強度が高いプラスチックといったイメージです。

ペクトン®の素材の特長は?

・金属アレルギーの心配がない

人工関節や椎間板など身体の中にも使用される素材なのでジルコニアと同等に生体親和性(生体になじみ適合すること)が高く、金属のイオンが溶けだして腫れやかゆみが出たりするようなことはありません。

・衝撃を吸収する効果(ショックアブソーバー)を持っている

天然の歯の根っこと歯を支える骨(歯槽骨[しそうこつ])の間に歯根膜[しこんまく]という組織があります。その歯根膜はクッションのような役割をしたり、噛み締めたりしたときの感触を伝えてくれる組織です。
歯を失いインプラントを埋め入れたとしても、歯根膜の役割を果たす機能がないため噛み締めたときの力や衝撃が制御できず壊れてしまう可能性があります。
そこで、埋め入れたインプラントの上部構造(被せ物)の土台にペクトン®を使用することで、歯根膜の役割のような衝撃を吸収してくれる効果を活かし、インプラントを過剰な力から守ってくれるものとして期待されています。

・軽く、柔軟性がある

素材が軽いということは、口の中で被せ物として使用する場合に違和感が抑えられることにつながります。例えば、歯をすべて失ってしまった方の全顎インプラント(All-on‐4)の内側の素材にペクトン®を使用すれば、金属を使用した被せ物と比べても軽くすることができます。また、柔軟性があるということは、衝撃を吸収してくれる効果を活かすことができるので、より自然な噛み心地を得られる可能性があります。

ペクトン®を使用したジルコニアの被せ物の特長は?

ペクトン®を土台としたジルコニアの被せ物は、写真のように外側がセラミックのジルコニア、内側がペクトン®という構造で製作します。
従来のインプラントの被せ物(上部構造)は、主に、レジン、金属、セラミックから作られていました。

レジンは、ペクトン®と同じくプラスチック(合成樹脂)で、天然の歯と同じような色味で作ることができます。しかし、材質がもろくセラミックより欠けやすい・プラーク(歯垢)が付きやすい・劣化または変色が早いという特長もあるため、被せ物の作り直しの頻度が高くなりがちです。

一方、金属は昔から使用されている被せ物で金歯・銀歯と呼ばれています。硬すぎず独特な滑らかさがあるのが特長です。金や銀の見た目から前歯では使いづらいため、奥歯の被せ物としての使用や、内側に金属、外側にセラミックやレジンを貼り付けるなどに使用します。
また、金属アレルギーや歯茎の変色などの問題があることから、金属の代わりとしてセラミックの被せ物が選ばれるようになってきている傾向があります。

セラミックの中でもオールジルコニアクラウンは、金属アレルギーの心配がない材料の一つで、天然の歯と同じような見た目で審美性が高く丈夫です。ジルコニアは人工関節や人工ダイヤモンドに使用されるほどの耐久性があり、生体親和性が高いのも特長です。しかしその反面、材質が硬すぎて顎や土台となる歯の根っこ、噛み合う反対の歯を痛めてしまう場合があります。噛んだ時にカチカチする音が気になる場合は、しっかりとした調整をすることをおすすめします。

ペクトン®を土台としたジルコニアの被せ物は、特長である衝撃吸収効果を活かすため内側の素材にペクトン®、外側の素材をジルコニアにすることで、ジルコニアクラウンの利点である「強度・審美性が高い」をそのまま活かし、「硬すぎる」「噛んだときカチカチ音がするのが気になる」という欠点や金属アレルギーの改善に期待できるでしょう。

ジルペッククラウンはインプラント以外の治療にも効果的

ペクトン®はインプラントの被せ物だけでなく、歯を失った部分を補う方法のひとつであるブリッジや、歯の土台となるコアにも適用できます。ただし、ペクトン®自体の色味は天然の歯とは違うので被せ物単体として使用することは難しい為、被せ物の内側の素材として使用されているようです。

※お取り扱いについては歯科医院にお尋ねください。
※ペクトン®を使用した被せ物をメンテナンスする場合は、専用の器具が必要となります。
※ペクトン®を加工するには専用の器材や加工ソフトが必要となります。

※治療結果は、患者様によって個人差があります。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。