インプラントと電子タバコの関係

日本では、タバコが健康被害につながるという認識が広く浸透してきました。平成元年には男性で55.3%、女性で9.4%だった喫煙率は、令和元年にはそれぞれ27.1%、7.6%にまで下がっています。
副流煙や健康リスクの解消として登場しているのが、電子タバコや加熱式タバコと呼ばれる、カートリッジ式の製品です。こうしたタバコは、健康や寿命、インプラント周囲炎にまったく悪影響がないものなのでしょうか。
歯科治療では禁煙が推奨される場面が多く見られますが、インプラント治療も例外ではありません。インプラント治療において、電子タバコや加熱式タバコも吸わない方が良いという理由について、解説します。

更新日:2021/12/06

インプラントと電子タバコの関係

■目次

  1. 電子タバコ・加熱式タバコの特徴
  2. タバコが与えるインプラント周囲炎への影響
  3. インプラント治療をした方・する方は電子タバコ・加熱式タバコも控えたほうがよい

電子タバコ・加熱式タバコの特徴

そもそも、電子タバコや加熱式タバコには、どのような特徴があるのでしょうか。

まず、一般的によく知られている「紙巻タバコ」を改めて見ていきましょう。
紙巻たばこは、葉タバコを刻み乾燥させた「刻(きざみ)」と、煙をろ過する「フィルター」、それらを包む「巻紙(まきし)」「チップペーパー」で構成されています。この刻を加熱することにより、それに含まれている香料などが独特の香りや味わいを出します。一方で、タールやニコチンといった体に悪影響があるとされる物質がタバコの煙に含まれるため、健康面で懸念されています。

電子タバコと加熱式タバコは、外見はどちらも似ていますが、製品の構成や機能はまったく異なります。

大きなポイントとして、タバコの葉の使用が挙げられます。加熱式タバコがタバコの葉を加熱するのに対し、電子タバコはタバコの葉を使用していません。カートリッジの中に入っている液体を電気加熱することで蒸気を発生させる、という仕組みになっています。こうした構造により、電子タバコにはニコチンが含まれていないほか、タバコの葉を使用していないため日本国内ではタバコ製品としては販売されていません。ただし、海外の電子タバコはニコチンが含まれたり、タバコ製品として扱っている国もあります。

加熱式タバコは、紙巻タバコ同様にタバコの葉を使用してはいますが、紙巻タバコが800度もの高温でタバコの葉を燃焼させて煙を発生させるのに対し、加熱式タバコは葉を300度以下で加熱させることにより、蒸気を発生させます。これにより、有害物質の発生を抑えているという声もあります。

このように、電子タバコと加熱式タバコは、そもそも「タバコ」であるかどうかという点で大きく異なりますが、どちらも煙を出さず、紙巻タバコよりも体への影響が少ないのではないかという声もあります。

タバコが与えるインプラント周囲炎への影響

タバコが与えるインプラント周囲炎への影響

タバコは体に影響を及ぼすという話はよく聞きますが、インプラント治療にはどのような影響が考えられるのでしょうか。

インプラント治療後のリスクとして、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が指摘されています。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲組織が炎症を起こすことで骨が溶けていき、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまうものです。インプラントが脱落してしまうリスクは喫煙者の方が非喫煙者より2倍ほど高いと言われていますが、その原因の多くがインプラント周囲炎です。

喫煙者にインプラント脱落者が多い要因として考えられるのが、タバコに含まれるニコチンとタールです。中でもニコチンはヒトの免疫力を低下させる性質があり、歯肉のようにむき出しになっている組織は影響を受けやすいと考えられます。歯肉の免疫力が低下すると、インプラントと骨が結合しにくくなるなど、インプラントの脱落を引き起こす状態につながってしまいます。さらに、喫煙によって唾液が減少し、インプラント周囲炎を引き起こす細菌を抑制しにくくなるという問題もあります。

歯肉に悪影響を及ぼす要因としてほかに挙げられるのが、喫煙による血管の収縮です。血管が痩せると栄養が歯肉や骨にしっかりと届かず、歯肉が酸欠状態に。インプラントは骨や歯肉に支えられることで機能します。喫煙習慣は歯肉や骨の健康を妨げ、インプラントの脱落を引き起こす可能性が考えられています。

インプラント治療をした方・する方は電子タバコ・加熱式タバコも控えたほうがよい

インプラント治療をした方・する方は電子タバコ・加熱式タバコも控えたほうがよい

それでは、「紙巻タバコより体に優しい」という声もある電子タバコや加熱式タバコであれば、インプラント治療中に吸っても問題ないのでしょうか。

結論からいえば、電子タバコや加熱式タバコも、紙巻タバコ同様に控えるべきだと考えられます。

カートリッジを使ったタバコは煙が出ず、さらにタールの成分が少ないことから、健康被害を抑えられるのではないかと言われることがあります。

しかし、例えば加熱式タバコは、すべての有害物質が除去されているわけではありません。加熱式タバコには、タバコを吸いたくなる要因とされるニコチンが含まれており、このニコチンによって血管の収縮が誘発されます。血管への悪影響はインプラントと骨の結合に問題を起こすおそれがあるので、注意が必要です。

インプラントを埋める際に骨量などが充分にない場合は、骨を作るための治療をすることがあります。しかし、喫煙習慣がある方は、骨を増やすための手術ができないと判断されることがあります。インプラントを5~10年使っていくというスパンで考えると、歯肉や骨が痩せやすくなる喫煙は、大きなリスクがあると考えられているためでしょう。

また、タバコの代用品とも考えられる電子タバコも、安全性は不明です。インプラント治療のように骨や歯肉を引き締める必要がある場面では、使用を控えた方が良いでしょう。

インプラント治療を考えている方は、電子タバコや加熱式タバコを含め、喫煙習慣を減らしていく必要があります。インプラントは高額な治療となるだけでなく、長い付き合いとなります。インプラントの寿命を伸ばして食生活を豊かにするためにも、禁煙を考えてみてはいかがでしょうか。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。