インプラント_アバットメントの役割

永久歯に近い人工歯として、その機能性や審美性が評価されているインプラント治療。治療ではインプラント体と呼ばれる人工歯根や、上部構造と呼ばれる人工歯などが使用されますが、その2つを連結しているのが「アバットメント」と呼ばれる部品です。
アバットメントの機能は、単に人工歯根と上部構造をつなげるだけではありません。インプラントの噛み合わせを調整するなど、細やかな機能性を実現するために欠かせない役割を果たします。また、アバットメントの素材によって特徴が異なるので、インプラント治療を受ける前にそれぞれのメリット・デメリットを知っておくことが大切です。
インプラントの影の立役者「アバットメント」に着目し、特性などについて解説します。

更新日:2021/12/02

インプラント_アバットメントの役割

■目次

  1. 1. インプラント治療で使用するアバットメントとは
  2. 2. インプラント治療のアバットメントに使用される素材の特徴
  3. 3. 既製アバットメントとカスタムアバットメントの比較

1. インプラント治療で使用するアバットメントとは

そもそも、インプラント治療とはどのようなものでしょうか。歯を失った場合、入れ歯やブリッジを入れたり、矯正で隙間を閉じるなどの治療を講じることになります。
そのほかの選択肢として「インプラント治療」もあります。インプラントは人工歯根(インプラント体)を顎骨に埋め込むことで人工歯(被せ物)をしっかり固定するという治療方法です。この方法により、入れ歯やブリッジに比べて強く噛むことができ、ほかの歯に負担をかけることもありません。また、人工歯の見た目も天然歯に調和させることができるので、入れ歯がコンプレックスだという方にも有効です。インプラントの機能性・審美性の高さから「第二の永久歯」とも呼ばれています。

手術を2度行う「二回法」と呼ばれる治療の流れとしては、まず外科的手術によってインプラント体を顎骨に埋め込み、歯肉を被せて縫合します。インプラント体が骨と結合するまで3~6ヵ月待ち、しっかりくっついてから歯肉を再び切り開き、アバットメントをインプラント体に連結させます。それから、上部構造を被せることになります。「一回法」の場合、1度の手術でインプラント体とアバットメントを結合させ、インプラント体と骨が結合するのを待ちます。

インプラントは、歯根の役割を果たす「インプラント体」、被せ物として歯の役割を担う「上部構造」、そしてインプラント体と被せ物を連結するための「アバットメント」という構成になっています。インプラントで目立つのは歯根と歯の部分ではありますが、アバットメントはインプラントそのものの強度を助けて噛む力を補正することができます。さらに、インプラントの角度と噛む方向も補正できるアバットメントは、インプラントの細やかな機能性に大きく貢献しているといえるでしょう。

2. インプラント治療のアバットメントに使用される素材の特徴

顎骨に埋め込むインプラント体は、生体親和性などの観点からチタンを主とするチタン合金がしばしば使用されます。一方のアバットメントは、さまざまな素材が用意されています。患者さんからすると、口を開けたときに目立つ被せ物の素材にこだわる傾向にありますが、実はアバットメントも選ぶ素材によってメリットやデメリットが異なります。ご自身が必要とする機能を確認し、アバットメントの素材も慎重に選ぶとよいでしょう。

・チタン合金
生体親和性が高く、上皮に接着しやすいという特徴があります。また、強度が高くさびにくいといったメリットもあるので、インプラント治療ではよく選ばれる素材です。ただ、チタン合金は金属のため、インプラント治療後に歯肉が下がったり透明感のある上部構造を使用したりすると、金属部が見えてしまう可能性があります。

・ジルコニア
セラミックは透明感と自然な白さが特徴で、被せ物などで多く使用されますが、ジルコニアはそのセラミックの中で最も強度が高い部類の素材です。非金属製なので金属アレルギーの心配がありません。審美性の高さから、連結部分が目立つこともありません。
デメリットとしては、金属製のアバットメントに比べて価格が高くなる傾向にあるという点が挙げられます。また、歯よりも硬い素材となるため、噛み合う歯、または周囲の歯などにダメージを与える可能性があります。

・金合金
金を融合させてできた金属です。金を含むことでアバットメントが適切な硬さになり、インプラントに適合しやすくなります。ただし、チタン合金と同様に金属部が見えてしまう可能性があるほか、チタン合金より価格が高くなる傾向になります。

・プラスチック
プラスチック製のアバットメントは、仮歯の期間に暫定的に使用されることがあります。

3. 既製アバットメントとカスタムアバットメントの比較

人工歯が、患者さんの噛み合わせなどに合わせてカスタムで作製されるのはご存知かと思います。実は、アバットメントも患者さんの状態に合わせて設計し、作製したものを使用することができます。

まず、インプラントメーカーで作製されている既製品の特徴を見ていきましょう。既製品とはいえ、パーツの形状や大きさ、角度の種類は豊富に用意されています。また、既製のアバットメントを調整して理想的な形態にする方法も考えられますが、患者さんに合わせるうえでは生物学的にも審美的にも不充分となるケースがあります。

カスタムアバットメントは、患者さんの歯並びや歯の角度などに合わせて作られます。CAD/CAM技術と呼ばれるシステムを使うことで、より精密なアバットメントを作製できるようになりました。ただし、既製のパーツに比べると価格が高くなる傾向にあるので、注意してください。

アバットメントという小さな部品ひとつを取っても、インプラント治療において重要な役割を担っていることがおわかりいただけたかと思います。こうした知識を頭に入れておくだけでも、インプラント治療を受ける際、担当医の説明がスムーズに理解できるようになります。アバットメントを選択する際の情報としても、ぜひご活用ください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。