歯茎の中の袋「嚢胞」摘出! 顎の骨がなくなる怖い袋

歯の治療でレントゲンを撮った際などに、「歯の根の先に嚢胞(のうほう)があるから、摘出しないといけない」といわれたことはありませんか?

また、歯科医師から、「嚢胞摘出だけでなく抜歯の可能性もある」といわれて意味がわからず、不安に感じている人もいるでしょう。

聞き慣れない「嚢胞」とは一体何なのか、すぐに摘出しないとまずいのか、などわからないことだらけですよね。

放っておくと顎の骨がなくなることもある「嚢胞」について詳しく解説します。

更新日:2022/08/29

嚢胞摘出

■目次

  1. 骨がなくなる!?「嚢胞」
  2. 手術で取り除く「嚢胞摘出」
  3. 歯根嚢胞は摘出手術がいらないことも多い
  4. まずは経過観察から
  5. まとめ

骨がなくなる!?「嚢胞」

嚢胞とは身体の中に生じる袋のことで、袋の中には液状の膿や唾液などが入ってるものもあります。

お口と関わる嚢胞もあり、顎の骨の中やお口の粘膜に発生することもあります。
痛みなどのはっきりした症状がないまま徐々に肥大する嚢胞も多く、ほかの歯の治療の際にレントゲンなどを撮影してたまたま見つかるというケースもあります。

お口の中でも歯に関係する嚢胞として、歯根嚢胞・含歯性嚢胞・歯原性角化嚢胞などがあります。

これらは顎の骨の中に嚢胞をつくります。
特に虫歯などが原因でできる歯根嚢胞の患者さんが一番多く、顎の骨の中に生じる嚢胞の50%以上を占めるといわれています。

顎の骨の中で症状もなく徐々に嚢胞が大きくなることが多く、見つかった時には既に大きな嚢胞になっていたということもあります。
嚢胞は顎の骨を吸収しながら大きくなるため、嚢胞がある部分=顎の骨がないといえるでしょう。

手術で取り除く「嚢胞摘出」

歯根嚢胞 治療

嚢胞の大きさや状態によっては、外科手術で嚢胞摘出を行います。

虫歯を原因としない含歯性嚢胞や歯原性角化嚢胞と呼ばれる嚢胞も基本的に嚢胞摘出手術が必要となるのです。

特に歯根嚢胞の場合、歯を抜いて嚢胞にアプローチすることもありますが、多くの場合は嚢胞がある歯の部分の歯茎を切り開き、顎の骨を露出して嚢胞を取り除きますよ。

歯根嚢胞は摘出手術がいらないことも多い

「歯根嚢胞」は、嚢胞摘出手術を行わないこともあります。

根管治療と呼ばれる、歯の神経が通っている空洞からアプローチし、歯の中や嚢胞の中に潜んでいる菌を除菌します。
根管治療で改善しなかった場合や、そもそも根管治療ができない状態であれば、嚢胞摘出術を行います。嚢胞が大きく、歯の周囲の骨を大きく溶かして歯の維持ができない場合は抜歯して嚢胞を取り除きます。抜歯した後は部分入れ歯やブリッジ、インプラントなどによる人工歯を足す治療をすることが一般的です。

歯根嚢胞によって顎の骨がなくなった場合も、骨が回復すれば抜歯した箇所にインプラントを埋め込むことができますよ。

まずは経過観察から

歯根嚢胞 経過観察

嚢胞の大きさや状態により手術で摘出すると説明しましたが、身体の代謝によっては自然治癒することもあるのです。

極小さい嚢胞の場合は、3 ~6ヵ月ほど経過観察して嚢胞が大きくなるなら改めて治療を検討するといったケースも多くあります。

特に、以前治療した部位に嚢胞が再発した場合は少し経過観察をする傾向にあるようです。

また、ほかの医院で根管治療をしたけど歯根嚢胞が治っていないという場合、菌が取り除けていれば時間経過によって少しずつ小さくなることが期待できます。
完全に歯根嚢胞がなくなったら治療完了にするわけでなく、小さくなったら治療完了という判断をすることも多いので、担当医に確認してみてくださいね。

まとめ

液状の内容物を含む嚢胞のうち、歯根嚢胞と呼ばれる主に虫歯が原因で発症する歯根嚢胞の割合が多いです。

嚢胞は大きくなるにつれて、周りの顎の骨を溶かしてしまいます。
含歯性嚢胞・歯原性角化嚢胞などは、あまりにも大きくなると、全身麻酔をして嚢胞摘出手術(および抜歯)が必要となることもあるため、早期の診断・治療が大切です。

「嚢胞がある」といわれたら、しかるべき治療を受けましょう。

記事監修

記事監修:古川雄亮

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。
歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。
2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。