インプラント手術で使用する局所麻酔と静脈内鎮静法の違いは?特徴や費用を解説
「インプラント治療を受けたいが、手術中の痛みが心配、手術後の痛みや不快感にも懸念がある」方は多いです。
麻酔をかけることに心配されている方もいらっしゃるでしょう。この記事では、インプラント手術での局所麻酔と静脈内鎮静法の違い、麻酔の特徴や費用などを紹介します。
更新日:2025/05/21

■目次
要約

・インプラント手術では主に局所麻酔をしますが、恐怖心が強い場合や身体の状態によっては静脈内鎮静法を併用します。
・静脈内鎮静法はインプラント手術の場合、公的医療保険の適用外であり、相場とは50,000円~80,000円です。
インプラント手術で用いる麻酔の種類
インプラント手術には「局所麻酔」と「静脈内鎮静法」の2種類があります。どちらの麻酔にもメリット・デメリットがあります。
インプラントの手術で使用される麻酔の特徴について紹介します。
インプラント手術で主に使われる局所麻酔とは?
インプラント手術では主に局所麻酔が使用されます。局所麻酔は外科手術をする部分に注射し、痛みなどの感覚を麻痺させます。局所麻酔には「浸潤麻酔法(しんじゅんますいほう)」「伝達麻酔法」「表面麻酔法」などがあります。
浸潤麻酔法は歯科で主流です。虫歯の治療でも使用されており、注射器を用いて歯肉に直接針を刺して麻酔液を注入します。歯科治療で経験した方も多いでしょう。
浸潤麻酔法よりも広範囲に麻酔を効かせたい場合に用いられるのが伝達麻酔法です。浸潤麻酔よりも長い注射針を使用し、顎に通っている大きな神経の近くに麻酔液を注入して麻痺させることで、効率的に麻酔が奏功します。
歯科治療では、下顎の親知らずの抜歯で麻酔が効きにくい時などに麻酔を効かせたい時に行われます。
インプラント手術に使われる静脈内鎮静法の特徴は?
静脈内鎮静を受けると意識がぼんやりし、リラックスできます。完全に意識を失うわけではなく、医師の呼びかけには反応できるなどぼんやりとした状態に近いです。
手術の恐怖心を和らげたい場合に適していますが、痛みはなくならないため局所麻酔と併用します。
過去の歯科治療から治療に対して恐怖を感じている方を始め、嘔吐反射がある方、疼痛反射がある方、高血圧の方、循環器疾患方など、身体の状態によって静脈内鎮静法が適しています。
ただし、妊娠中や授乳中の方などは静脈内鎮静法を受けることができません。通院歴がある方、服薬歴がある方は歯科医師だけではなく主治医にも相談し、少しでも不安がある方はカウンセリングで伝えましょう。
静脈内鎮静法のデメリットとして、手術後は1日中眠気を感じやすいため、車やバイクを運転して帰ることはできません。
参考:日本歯科医師会
インプラント手術の静脈内鎮静法の費用はいくら?
静脈内鎮静法はインプラント手術の場合、公的医療保険外です。静脈内鎮静法はインプラント治療の料金に含まれていない場合が多いため別途費用がかかることが多いでしょう。
自由診療のため費用は医院により異なりますが、静脈内鎮静法の一般的な相場として
50,000円~80,000円です。
2024年11月 株式会社メディカルネット調べ
インプラント手術で全身麻酔は使用される?
外科手術というと全身麻酔を思い浮かべる方も多いと思いますが、インプラント手術では全身麻酔はほとんどされません。
インプラント手術は歯肉を切開して顎の骨の一部に穴をあけますが、侵襲も少なく短時間で終わる外科手術です。
インプラント手術でも、痛みに非常に敏感な場合やじっとしていることができない場合には全身麻酔が行われることもありますが、手術中の管理や入院が必要となり、治療費用も高額となります。
また、全身麻酔にはリスクも伴うため、積極的に行われません。
麻酔はどれくらいで切れる?
麻酔の持続時間は代謝スピードなどの個人差が大きいですが、浸潤麻酔法は2時間~3時間、伝達麻酔法は4時間~6時間、表面麻酔法は10分~20分で切れます。
静脈内鎮静法の麻酔薬の点滴を止めれば意識がはっきりし始めるでしょう。治療後は意識がはっきりするまで少し休憩してから帰宅します。
静脈内鎮静法では意識がはっきりしてからも、治療部位には局所麻酔が効いています。麻酔が切れるまでは違和感を感じることがありますが、局所麻酔が切れれば解消されるでしょう。
インプラント手術後の痛みを抑えるポイント5つ
麻酔が切れた後の痛みに対する不安を抱えている方も多いです。インプラント手術後の痛みをできるだけ抑えるポイントを紹介します。
喫煙を控える
タバコに含まれるニコチンは、血流が悪くなり白血球の機能を低下させるため治療した部位が細菌感染しやすくなります。また、タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素を運ぶ機能を低下させてしまい、骨や歯に十分な栄養が行き届かなくなります。
喫煙者は非喫煙者よりも歯周病やインプラント周囲炎にかかるリスクが高く、治療部位に痛みが生じやすい傾向がありますインプラント周囲炎では、インプラントを支える顎の骨が脆くなり、最悪な場合はインプラントが抜け落ちてしまう恐れもあるのです。
→インプラント周囲炎の症状について、詳しくは『インプラント周囲炎 注意!インプラントが抜けることも』の記事をご覧ください。
固い食べ物を避ける
インプラント手術後に固い物を食べると、出血したり傷口が裂けたりする恐れがあります。また、刺激物やお餅、ガムなども痛みや出血の原因となるため注意が必要です。
インプラント手術の痛みが落ち着くまでは、おかゆ・豆腐・ヨーグルトといった軟らかい物を食べるようにしましょう。また、あまり熱い食べ物や飲み物も推奨されていません。
飲酒や入浴を控える
アルコール摂取や入浴によって血流が促進されると、血が固まる働きが阻害され、傷口の治りが遅れてしまいます。
インプラント手術後2日~3日は飲酒や入浴を控えるようにしましょう。同様に、運動などの体温が上がる行為は避けたほうが良いといえます。
また、アルコールを摂取すると脱水症状を起こしやすくなり、自浄作用や抗菌作用がある唾液の分泌量が少なくなります。歯周病やインプラント周囲炎にかかるリスクが高まるため注意が必要です。
歯ブラシで患部を磨かない
抜糸するまでは、治療部位を歯ブラシで傷つけないように注意しましょう。歯ブラシが当たるだけでなく、歯磨き粉や洗口液も傷口に刺激を与えてしまうため、抜糸するまでは何もつけずに軟らかい歯ブラシで歯磨きを行いましょう。
そのほか、うがいによっても出血してしまう恐れがあるため、軽く口をゆすぐ程度に留めると良いです。
痛み止めを適切に使用する
インプラント手術後の痛みを和らげるために、鎮痛剤が処方されます。麻酔が切れた後は、痛みを感じることがありますが、無理に我慢せず、服用の間隔を守りつつ、痛み止めを飲んで安静に過ごしましょう。
薬が必要なほどの痛みが3日以上にわたって続く場合、痛み止めを飲んでも非常に強い痛みを感じる場合は、担当歯科医師に連絡しましょう。
→インプラント治療の詳しい費用相場については「インプラント治療の外科手術にかかる費用」の記事をご覧ください。
まとめ
インプラント手術では局所麻酔を行なうため、手術中に痛みを感じることは基本的にありません。局所麻酔では意識がはっきりとしているため、手術中の音に恐怖心を抱いたり、手術が終わるまでの時間が長く感じる場合もあるでしょう。
恐怖心を和らげるために、静脈内鎮静法が活用されます。インプラント治療に対して不安を感じる方は遠慮せず担当歯科医師に確認しましょう。
記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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