インプラント周囲炎とは?原因・症状・治療と放置のリスクを徹底解説!

インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯周組織で炎症が起こり、あごの骨を溶かし、インプラントが抜けてしまう「インプラントの歯周病」です。

放置すると、インプラントがぐらつき、最悪抜け落ちます。
この記事では、インプラント周囲炎の原因・症状・治療・予防法を、歯科医師監修の元わかりやすく解説します。

更新日:2025/12/08

インプラント周囲炎

■目次

  1. 記事の3つのポイント
  2. インプラント周囲炎とは?
  3. インプラント周囲炎の進行度合いによって、2つに分けられる
  4. インプラント周囲炎の症状をチェック
  5. インプラント周囲炎を放置するとどうなる?
  6. インプラント周囲炎による弊害とは?
  7. 他の歯への弊害
  8. 体への悪影響
  9. インプラント周囲炎に関するよくある質問(FAQ)
  10. Q1. インプラントを入れてから何年経つと、インプラント周囲炎になる可能性が高まりますか?
  11. Q2. 定期検診はどれくらいの頻度で行けばいいですか?
  12. Q3. 初期の段階で症状がなくても治療は必要ですか?
  13. まとめ

記事の3つのポイント

・インプラント周囲炎は、インプラントを支える歯茎やあごの骨に炎症が起こる歯周病の一種
・清掃不良あり・糖尿病あり・喫煙あり・定期検診受けてないなどが原因
・放置するとインプラントが脱落し、全身健康にも悪影響を及ぼす

インプラント周囲炎とは?

インプラント周囲炎とは、インプラントを支えるあごの骨に炎症が広がってインプラントがグラつくといった歯周病のような症状が起きる病気です。

放置すると、最悪インプラントが抜け落ちます。インプラント周囲炎を予防するためには、日々のセルフケアと定期的な検診が重要です。

インプラント周囲炎の進行度合いによって、2つに分けられる

インプラント周囲炎は進行度によって大きく二つに分けられます。

「インプラント周囲粘膜炎」:炎症がインプラント周囲の歯茎にみられます。初期段階のため、軽い腫れや赤みが見られる程度で、自覚症状がほとんどないことが多いです。

「インプラント周囲炎」:炎症がインプラントを支える顎骨まで広がって、歯茎の退縮や膿の排出、出血、インプラントの動揺などの症状が出現します。症状に気付いたときには、すでに病気が進行していることが多く、早期発見・治療が重要です。

インプラント周囲炎の症状をチェック

インプラント周囲炎の初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると次の症状が見られます。

・歯茎の腫れや赤み
・出血や膿の排出
・歯茎の退縮
・インプラントのぐらつきや動揺


これらの症状が現れた場合、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

インプラント周囲炎になる原因とは?

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎の主な原因は口腔内の清掃不良です。毎日のケアが不十分なうえ、歯科医院でのメインテナンスを受けていないことが続き、歯垢(プラーク・歯周病原細菌)が増え、インプラントを支える顎の骨に感染・炎症が生じます。

また、糖尿病などの全身疾患や喫煙習慣があり、噛み合わせの不具合もあると、炎症による症状を悪化させます。さらに、複数の歯に広がる歯周病が元々あれば、インプラント周囲炎の進行リスクも高まります。

インプラント周囲炎を放置するとどうなる?

インプラント周囲炎の放置で炎症が進行し、インプラントを支えているあごの骨が溶けます。骨の吸収が進むと、インプラントが骨の支えを失ってグラつき、最悪自然に抜け落ちます。

初期段階の症状は歯茎の腫れや出血だけですが、放置すると細菌が増殖し、周囲の歯茎や骨に炎症が拡大します。インプラントだけでなく、隣の天然歯の歯周病も進行します。

「痛くないから大丈夫」と放置するのは危険です。噛み合わせの違和感や歯茎の出血、腫れなどの初期症状がある場合、早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けましょう。


参考:日本歯周病学会会誌

インプラント周囲炎による弊害とは?

インプラント周囲炎は、放置するとお口の中だけでなく全身にも悪影響を及ぼす可能性があります。ここでは「他の歯への影響」と「全身への影響」に分けて詳しく解説します。

他の歯への弊害

歯周病菌(歯周病原細菌)が増殖し、インプラント周囲炎になります。菌がインプラント周囲の歯ぐきや他の歯に広がると、他の歯が歯周病になるリスクが高まります。

また、インプラントがぐらつくことで噛み合わせのバランスも崩れ、周囲の歯に過度な咬む力の負担がかかります。結果、健康な他の歯が割れるなどして寿命を縮める可能性があります。

体への悪影響

細菌が歯茎の血管を通して全身に回ることがあります。これにより、糖尿病や心臓疾患、呼吸器疾患、動脈硬化などの全身の病気を悪化させるリスクがあるとされています。

糖尿病と歯周病の相互関係は深く、炎症が長引くことで血糖値のコントロールがしにくくなります。
お口の健康を保つことは、全身の健康を守ることにもつながります。

参考:厚生労働省

インプラント周囲炎に関するよくある質問(FAQ)

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎に関するよくある質問と回答を紹介します。

Q1. インプラントを入れてから何年経つと、インプラント周囲炎になる可能性が高まりますか?

A. 長期にわたり機能しているインプラントでは、インプラント周囲炎の発生率が上昇するという報告があります。とあるシステマティックレビューでは約5年以上経過している症例では発病リスクが高くなるということが指摘されています。

「〇年経ったら必ず発症する」というものではなく、ケアの状況や全身状態などが悪ければ数ヶ月で発症するでしょう。

参考:WHITE CROSS

Q2. 定期検診はどれくらいの頻度で行けばいいですか?

A. 2~3カ月に1回が一般的です。半年に1回の場合もあります。歯ぐきや骨の状態、セルフケアの習熟度などから通院頻度を決定します。
参考:日本臨床歯周病学会

Q3. 初期の段階で症状がなくても治療は必要ですか?

A. はい。初期では自覚症状がほとんどなくても、インプラント周囲炎になると顎の骨が徐々に破壊されます。メインテナンスによる早期発見・治療が、インプラントの長期維持には不可欠です。

参考:日本臨床歯周病学会

まとめ

インプラント周囲炎は、インプラントを支えるあごの骨や歯ぐきに炎症が広がってインプラントのぐらつき・脱落を最後に招く恐れがあります。
また、お口の中の細菌が血液を通じて全身に周り、糖尿病や心臓疾患のコントロールが悪くなります。

日々の丁寧なブラッシング、喫煙や生活習慣の見直しに加え、歯科医院での定期検診が、インプラント周囲炎の予防・早期発見と治療には欠かせません。インプラントの健康を守ることは、全身の健康を守ることにもつながります。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。