インプラント埋入後の縫合 ~抜糸までの期間や注意点~

インプラントの2回法では、手術の後に歯茎を縫い合わせます。

縫い合わせた糸が取れそうになったらどうしたらいいか?
「出血していないから」「傷口がもう治っているみたいだから」と、自分で糸を取るのはとても危険!

糸を取るタイミングや、なぜ歯茎を縫合するのか、縫合中の注意点について解説します。

更新日:2021/08/30

抜歯後の歯茎縫合跡

■目次

  1. インプラント埋入後に歯茎を縫合するのはなぜ?
  2. インプラント埋入後から抜糸までの期間の目安とは
  3. 抜糸まで注意したいポイント
  4. 糸が取れてしまいそうなときは
  5. まとめ

インプラント埋入後に歯茎を縫合するのはなぜ?

抜糸後、傷口を縫合する用の糸

インプラント治療は「インプラント体」と呼ばれるチタン製の金属(人工の歯根)を顎の骨に埋め込む手術のことを一般的にいいます。

インプラントを埋め込む際に、歯茎を切り開き顎骨が直接見える状態にします。
切り開いた歯茎の部分からインプラント体の周りに細菌が入り込み、感染による問題を引き起こさないために、歯茎を縫い合わせてインプラント体を保護するのです。

歯茎でインプラント体を完全に覆うようにしておくことで、インプラント体の感染による問題が起こる確率を下げることができると言われていますよ。

縫い合わせた歯茎は、時間が経つにつれて歯茎同士がくっつくように治癒していきます。
治癒するまでは、人工的に歯茎を縫い合わせておくことが大切です。

歯茎を縫う糸には複数の種類があり、お口の中の状態や通院できる回数などで異なります。

では、歯茎を縫うための糸の種類を見ていきましょう。

ナイロン糸

縫合用の糸の種類

ナイロン糸は汚れが付着しにくい性質があり、傷口から感染してしまう可能性を減らすことができます。

しかし、滑りが良いため糸が緩みやすいほか、糸が頬や舌にあたるとちくちく感じることもあるようです。

絹糸(シルク糸)

柔らかく、不快感の少ない絹糸

ナイロン糸とは反対に、結んだときに緩みにくい素材です。
また、ナイロン糸に比べて柔らかいため、ちくちくする不快感を軽減できます。

ただし、唾液や歯垢が絹糸に吸収・付着しやすいため汚れやすく、感染による問題が起こるリスクが高い傾向にあります。

吸収性糸

グリコール酸や乳酸で作られ、縫合から3~4週間ほど経つと体内に吸収される吸収性糸

グリコール酸や乳酸で作られた糸で、縫合から3~4週間ほど経つと自然に体内に吸収されるため、糸を取りに通院する必要がありません。

しかし吸収性の糸は強度が低く、縫い合わせる張度が不足したり、お口の中で取れやすい傾向にあるため使用されていない医院もあります

歯茎を切り開かす、ピンポイントで穴を開けるため歯茎を縫う必要のないフラップレス手術

このほか、インプラント手術には、歯茎を切り開かずに埋め込む「フラップレス手術」という方法があります。

インプラント体を埋め込みたい部分の歯茎にピンポイントで穴を開けるため、歯茎を縫う必要がありません。
このケースでは歯茎を切らないので、縫合もしなくて済みますよ。

ただし、術後翌日や1週間後に傷口の経過観察は行われることが多く、通院回数は大きく変わらないことが多いようです。

インプラント埋入後から抜糸までの期間の目安とは

インプラント埋入から抜歯までの期間

縫合した糸は、ある程度傷口が回復したら取り除きます。

インプラント埋入手術で切り開いた傷口は、1週間から10日程度である程度の治癒が見込めます。

そのためインプラント埋入後、糸取りまでの期間の目安はおよそ1週間から10日と言えますね。
長くかかったとしても、2週間程度で糸は取り除けるはずです。

体に吸収される糸で縫合したのであれば、抜糸の必要はありません。
遠方から治療に訪れている場合や、頻繁な通院が難しい場合は吸収性の糸を使えないかどうか相談してみてもいいかもしれません。

長期間放置も危険

縫合してから抜歯まで長期間の放置も危険

抜糸の目安はおよそ1週間から10日ですが、それよりも長く放置してしまった場合はどうなるのでしょうか?

あまり長く糸がお口の中に残っていると治癒するためにできた歯茎に取り込まれてしまい、糸が取りにくくなったり歯茎に埋もれてしまうことが。
いざ糸を取ろうとした時には、再び歯茎を切って糸を取り出さなければいけない、なんてことにもなりかねません。

切らずに糸を取り出せる場合も、通常のタイミングの抜糸では感じなくて済んだはずの引っ張られる痛みや歯茎と擦れる痛みを感じることがあります。

縫合用のハサミ

また、糸に付着した汚れや糸が吸収した唾液に含まれる細菌によって傷口の感染による治癒の遅延を引き起こしてしまう可能性もあります。

もちろん、抜糸が早すぎると傷口がふさがっていない可能性があるため早く取りすぎることもよくありませんが、放置しすぎることも避けましょう。

抜糸は指示されたタイミングで通院してくださいね。

抜糸まで注意したいポイント

抜糸までに特に注意しておきたいポイント

インプラント埋入後、歯茎を縫い合わせていても感染の可能性が0になるわけではありません。

抜糸までは特に注意しておきたいポイントを確認していきましょう。

糸を触らないようにする

舌や手で縫い合わせた糸を触らないように気を付けましょう

歯茎を縫い合わせた糸が頬や舌にあたり気になるかもしれませんが、舌や手で触らないようにしましょう。
触ることで傷口に菌が付着し、感染による問題が起こるリスクが高まってしまいますよ。

また、触ることで糸が緩む、糸が取れてしまうこともありますので注意してくださいね。

歯ブラシやフロスで患部を刺激しすぎない

糸の緩みや取れたりしないように歯ブラシやフロスを縫合したところになるべく触れない様にしましょう。

歯ブラシやフロスを使用する際は、なるべく縫合したところにブラシや持ち手、フロスが触れないようにしてください。

傷口を刺激すると治りが遅くなるだけでなく、歯ブラシやフロスに付着している大量の細菌が傷口に感染する可能性があります。
できれば刺激の強いマウスウォッシュや歯磨き粉の使用も控えておきましょう。

歯ブラシやフロスがひっかかることで糸が緩んだり取れてしまうことがあるので注意してくださいね。

飲酒や喫煙を控える

アルコールやニコチンの接種をやめる

アルコールが体内に入ると血流を促進し、出血しやすくなったり痛みやすくなります。

また、タバコに含まれるニコチンが毛細血管を収縮させ、傷を治りにくくします。
傷の治りが遅くなるということは、傷口から感染するリスクのある期間が長くなるということです。

抜糸までの期間だけでも、禁煙禁酒を頑張ってみてくださいね。
もしも禁煙禁酒ができないようであれば手術前に担当医に相談しておくことが大切ですよ。

刺激物や硬い食べ物は避ける

刺激の強い飲食物や硬い食べ物は避け、縫合跡に刺激を与えないようにする

お口の中の傷口も体にできる傷と同じで、刺激物が触れることはよくありません。
一般的に傷口についたら痛そうな辛いものや酸っぱいものなど、刺激が強いものは避けてくださいね。

また、硬い食べ物も傷口に触れると刺激となってしまいます。
場合によっては傷口にさらに傷をつけてしまうことも考えられますので、できるだけ避けておくと良いでしょう。

血行が良くなる行動を控える

運動や入浴は縫合した箇所の痛み、出血が起こらないように避けましょう

運動や入浴、飲酒など、体が温まって血液の循環が良くなると、縫合したところの痛みや出血が起こる場合があります。

術後当日はシャワーだけにするほか、抜糸までは長時間の入浴やサウナ、激しい運動、血行促進マッサージやエステは避けておきましょう。

糸が取れてしまいそうなときは

糸が取れてしまいそうになったら、再度歯科医院を受診しましょう

もし糸が取れてしまいそうなときは触らないようにして、早めに歯科医院で診てもらいましょう。

糸が取れかけていても自分自身で取らないようにしてくださいね。
自分自身で糸を取ろうと傷口を触ることで、傷口が開いてしまったり更なる感染を引き起こしてしまうかもしれません。

気付いたら取れてしまっていた、という場合も歯科医院へ連絡して傷口の状態を確認してもらいましょう。

既に傷が治ってきている場合はそのまま糸を取り除くこともありますが、まだ縫合していたほうがいい状態の場合は再度麻酔をして歯茎を縫い合わせます。

傷口が治っていないのに糸を取ってしまうと、感染や傷口の治りが遅くなる原因となりますので放置しないようにしましょう。

まとめ

抜糸までの約7~10日間、糸が取れないように注意して過ごしましょう。

インプラント埋入後の縫合は、感染から守る大切な役割があります。

抜糸までの期間は1週間~10日程度のため、その期間は注意点に気を付けて糸が取れないようにしておきましょう。
万が一糸が取れてしまった、取れ欠けている場合は放置せずに、歯科医院で適切な処置を受けてくださいね。

記事監修

歯科医師 古川雄亮先生御侍史

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。