上顎洞炎(じょうがくどうえん)について

インプラント治療におけるトラブルとして起こり得る上顎洞炎。ここでは上顎洞炎を引き起こす原因や症状、治療法について解説しています。

更新日:2021/12/02

上顎洞炎(じょうがくどうえん)について

■目次

  1. そもそも上顎洞炎(歯性上顎洞炎)とは
  2. 歯性上顎洞炎の原因と症状を知ろう!
  3. 歯性上顎洞炎の治療法
  4. 歯性上顎洞炎の人がインプラント治療を受ける上での注意点
  5. 歯性上顎洞炎のまとめ
  6. 記事監修

そもそも上顎洞炎(歯性上顎洞炎)とは

そもそも上顎洞炎(歯性上顎洞炎)とは

上あごの奥歯の上にある骨の空洞を上顎洞といい、目や鼻、口で囲まれた場所に存在しています。上顎洞は粘膜で覆われていて、左右対称に近い形をしており、人によってその形や大きさが異なります。上顎洞粘膜に細菌が入り込み、炎症が起きた状態を上顎洞炎といいます。(口腔内に関連した蓄膿症を歯性上顎洞炎といい、片方のみの鼻詰まりが特徴的です)

歯性上顎洞炎の原因と症状を知ろう!

原因
上あごの骨が薄く、奥歯の根っこの先端が上顎洞と近接している、または突き抜けている方は、下記のようなことが起こりやすい傾向にあります。

●虫歯や歯周病の治療を受けずに放置していたため、炎症が上顎洞粘膜まで波及した
●抜歯をした際に、上顎洞粘膜とつながり、感染した。また、治療中の人為的なミスによって引き起こすこともあります。
根管治療の器具や材料が上顎洞粘膜を突き抜け、細菌が入り込み感染した
●インプラント治療中に上顎洞粘膜が傷つき、細菌が入り込み感染した

これらの場合、基本的には歯科で治療を受けることになりますが、状態によっては十分な医療設備のある大きな病院での治療や、耳鼻咽喉科と連携が必要となることもあります。

上顎洞炎になるとどこが痛む?
上顎洞炎は、左右どちらか一方だけに起こることが多く、左右ともに起こることはごく稀です。主にみられる症状は下記の通りです。急性の場合は上記のような症状がみられますが、慢性の場合には痛むような症状が出ることは少なく、レントゲン撮影をしたことで発見されることもあるようです。

○上顎洞炎の症状
・歯が痛む
・歯茎が痛む
・噛むと痛む
・鼻がつまる
・鼻から黄色い膿が出る
・頬に圧迫感がある
・頭痛がある
・発熱している

歯性上顎洞炎の治療法

主に、上顎洞炎の治療と、原因となった部分の治療を併せて行います。

上顎洞炎の治療
・抗生物質や消炎剤を服用して感染を抑える
・痛み止めの麻酔の注射をして、歯の根の辺りの歯茎を切って上顎洞内の膿を出し、生理食塩水などで洗浄を行う。

原因となった部分の治療
・虫歯や歯周病が原因の場合、多くの場合に抜歯を行います。稀に根管治療で歯を残せることもあります。
・抜歯が原因の場合、服用薬で感染を抑えながら、自然に抜歯した部分が閉じることを待ちます。穴が大きく、自然に閉じることが期待できない場合は、歯茎を縫い合わせる外科処置などを行って上顎洞と口の交通を遮断します。
・人為的なミスが原因の場合、原因となったものを除去します。

これらの治療を受けても症状が改善しない場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科にて、内視鏡下で上顎洞と鼻腔をつないでいる穴を大きく広げて、膿を出しやすくする手術を行うこともあります。

歯性上顎洞炎の人がインプラント治療を受ける上での注意点

注意点 1 : 過去に上顎洞炎の治療歴がある
過去に上顎洞炎、または副鼻腔炎の治療を受けたことがあると、骨の量が不足している場合に、骨の厚みを増やす「サイナスリフト」の治療が受けられないこともあります。治療を始める前に歯科医師に伝えて、よく相談しましょう。

注意点 2 : インプラント治療でのリスクの一つ
インプラント治療での外科手術の際に、下記のような人為的なミスによって、上顎洞炎が起こったり、感染によってインプラント治療も同時に失敗したり、治療期間が大幅に延びたりすることがあります。

●インプラントを埋め入れる手術の際に上顎洞粘膜が傷ついた
●インプラントが上顎洞粘膜に入り込んでしまった
●骨の量が不足している場合に、骨の厚みを増やす「サイナスリフト」や「ソケットリフト」を行い、上顎洞粘膜が傷ついた

副鼻腔炎を患った状態であれば、インプラント治療期間の延長がますます大きくなります。治療を始める前に歯科医師とよく相談して、メリット・デメリットを聞き、納得して治療を進めましょう。

歯性上顎洞炎のまとめ

上あごの奥歯の上にある骨の空洞が炎症を起こす「上顎洞炎」は、虫歯・歯周病のような歯の疾患やインプラント治療時の人為的ミスなどが原因で起こってしまうことがあります。

症状は、頬付近の痛みや歯・歯茎の痛みがあります。さらに、悪化すると、頭痛や発熱などの症状を招くことも。歯科だけでなく、耳鼻咽喉科と連携しての治療が必要になる場合があります。発症や心当たりのある場合は、かかりつけの歯科医院か、耳鼻咽喉科に相談してみましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。