『インプラントの未来について』――ICOI第31回世界学術大会

■ ICOI第31回世界学術大会

ICOIによる世界学術大会が、東京国際フォーラムにて行われました(2014年10月3日(金)、4日(土)、5日(日)の計3日間)。会場には、50社を超える歯科関係の企業のほか、世界各国から1000名を超える多くの歯科医師・歯科従事者が集結しました。


会場となった東京国際フォーラム(有楽町) 大勢の人でにぎわう企業ブースの様子
▲ 会場となった東京国際フォーラム(有楽町)

▲ 大勢の人でにぎわう企業ブースの様子

第31回となる今回は、『インプラントの未来』をキーワードに、近年の治療実例をもとにした最新のインプラント治療技術や、その応用例、そして今後の活用方法の考察に至るまでの幅広い講義が行われました。一般的な外科治療に比べ、より患者様に合わせた治療が求められる歯科医療においては、過去の実例から学べることが少なくありません。講義中、また講義の前後には、意見交換をする様子や、メモを取る様子が数多く見られました。歯科医師・歯科従事者にとっても、この業界における、計り知れない未来の可能性を、あらためて感じさせられる一日になったようです。

ICOIとは…
1972年に設立された国際的な口腔インプラント学会。
※名称は、International Congress of Oral Implantologists(国際口腔インプラント)からスペルの頭文字をとった略称 「すべての患者様により良い歯科治療を提供する」ことを目的とした学会で、歯科医師をはじめ、歯科に関わる医療従事者を対象に、インプラントの教育に努めている。本部はアメリカのニュージャージー州に設置。日本支部もあるために、多くの日本人歯科医師も積極的に講演や研修プログラムに参加している。(http://en.icoi-ap.org/)

下記に、この度の学会で行われたプログラムの一部を簡単にご紹介致します。

会場の様子

■ プログラム紹介


1.講義名『What I have learnt from Osseointegration(オッセオインテグレーションから学んだもの)』

講師:小宮山 彌太郎氏 (DDS、PhD)


What I have learnt from Osseointegration(オッセオインテグレーションから学んだもの)

多くの歯科治療患者様の悩みを解決してきたインプラント治療だが、当然まだまだ課題も多く、またすべての患者様の満足いくものにはなっていない。しばしば問題点となる、“緩み”やインプラントの破折、インプラント周囲炎などについては、歯科医師の知識不足や、技術力の無さから起こってしまっていることだと話されました。メインテーマである『インプラントの未来』については、「患者様にやさしく、また術者にもやさしくなければならない」と話され、治療において、丈夫さや安定性を追い求め、チタン合金を使用するのは必ずしも正ではなく、状況においては金合金を使うことなどの優位性について話されました。


2.講義名『Tooth Regenerative Therapy as a Future Dental Treatment(歯科学における歯の再生治療の未来)』

講師: 楠川 仁悟 先生


Tooth Regenerative Therapy as a Future Dental Treatment(歯科学における歯の再生治療の未来)

インプラント治療では糖尿病や高血圧症などの全身疾患の合併など、すでに全身的なリスクを抱えていないか把握する必要がある。全身的なリスクマネージメントは一般的な外科手術と変わることはないと、全身的リスクファクターの把握が非常に重要であるとお話されていました。本シンポジウムでは、骨粗しょう症治療薬として投与されるビスホスホネート製剤(BMA)を投与されている患者様へのインプラント外科治療について発表されていました。


3.講義名『Office base bone regeneration : imaging, tissue engineered materials, containment(骨(こつ)再生の構想)』

講師:リチャード・クラウト(Richard Kraut)氏 (DDS)


Office base bone regeneration : imaging, tissue engineered materials, containment(骨(こつ)再生の構想)

先天的に、歯、ひいては歯顎全体の形成に問題を抱えて生まれてきた児童たちにとっても、インプラント治療は欠かせないものになっています。「インプラントは単に1、2本、歯を失った患者様のためのものじゃない」と語られたクラウト氏は、成長過程にある児童患者様や高齢の患者様へのインプラント治療例をもとに、骨(こつ)再生と未来に向けての治療の必要性を話されました。また、10年前にはなかったBMPなどの技術により、かつては長期の入院が与儀なくされた再生治療が、いまでは歯科医でも対応可能となっている現状についても話されました。


4.講義名『Predictable Soft Tissue Management for Implant Complications and Failures in the Esthetic Zone(審美的な観点で見るインプラント治療)』

講師:林保瑩(Paul P. Lin)氏 (DDS、MS)


Predictable Soft Tissue Management for Implant Complications and Failures in the Esthetic Zone(審美的な観点で見るインプラント治療)

インプラント治療が、歯の悩みを持つ患者様にとっての希望となる一方、周囲炎などにはじまる合併症の発生などのトラブルも決して少なくありません。Lin氏は、歯科治療においては単に歯を“つける”ということではなく、審美的な観点においても、患者様へ満足を与えることが重要と話し、それ故に、インプラントが長持ちするかどうか、また合併症が起こらないように、いかにした治療が考えられるかを、数々の事例とともに話されました。患者様のニーズに応えるためには、単に治すだけではなく、審美的な満足も目指していくことも必要であるという、治療の“先”を観た取り組みについての講義となりました。


5.講義名『Accelerated Orthodontics――Integrating New Concepts In Your Daily Practice(“加速矯正”についての新しい概念)』

講師:マニ・アリハニ(Mani Alikhani)氏 (MSc、DMD、PhD)


Accelerated Orthodontics――Integrating New Concepts In Your Daily Practice(“加速矯正”についての新しい概念)

アリハリ氏の講義は、「インプラントという定義の話からは少し外れたものだが――」という前置きもあり、『歯の矯正治療』における最新の施工術について話されました。歯の矯正治療といえば、どうしても時間がかかるものでありましたが、Microperforation(マイクロパーフォレーション)という、歯肉の炎症作用などを利用した技法により、飛躍的にスピードアップを可能となっていることを紹介されました。こうした技術の発展が、インプラントを含めた歯科学全体の発展に繋がることでしょう。


■ ICOI第31回世界学術大会に参加して

以上が、3日間に行われた講義の内の一部の概要となります。 この講義のみを見ても、インプラント治療における未来の大きな可能性をあらためて感じさせられ、また、まだまだ研究・改善の余地のある治療であることを再認識した歯科医師・医療従事者の方も少なくなかったのではないのかと思われます。インプラント治療の追求が、多くの歯・口腔内に関するトラブルを抱える患者様たちの喜びに変わっていくと信じてやみません。 インプラントネットでは、引き続き、学会などで発信される情報をお届けしてまいります。

>>ICOI第31回世界学術大会 公式ページ(英語)
※講演の発表内容については、当サイトにおいて必ずしも保証するものではございません。
レポート:インプラントネット事務局

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