歯周病でもインプラントはできる? インプラントと歯周病の関係

インプラント治療を、歯周病にかかっているからと治療を諦めていませんか?

歯周病の方はインプラント治療ができないのでしょうか。
歯周病はインプラントの寿命に関係するほど重要なポイントとなっています。

歯周病とインプラントの関係性や、歯周病によるインプラント治療への影響、そして歯周病に似ている「インプラント周囲炎」について解説します。

更新日:2021/06/14

歯周病でもインプラントはできる? インプラントと歯周病の関係

■目次

  1. 歯周病でもインプラントはできる?
  2. 歯周病の人がインプラント治療を受けるリスク
  3. インプラントの歯周病とは?
  4. 歯周病改善の目安とは
  5. インプラント治療後も歯周病治療を継続しましょう
  6. まとめ

歯周病でもインプラントはできる?

歯周病でも、インプラント治療を受けることはできるといわれています。

ただし、歯周病の重症度やインプラント治療を受けたい部位の周りの歯の状態、インプラント手術をした際のリスクの程度などをしっかりと検査をすることが必要です。

検査の結果によってはすぐにインプラント治療を受けることは難しいと診断されるケースもあり、まずは歯科医院にてお口の中の検査を受けることが大切です。

すぐに治療を受ける事が難しいと言われた場合でも、歯周病治療を受けお口の中の状態を改善すれば、インプラント治療を受けることができるかもしれません。

一刻も早くインプラント治療を受けたいのに!と思われるかもしれませんが、歯周病とインプラントには深い関係があり、歯周病治療も大切なインプラント治療を進めるうえで大切な治療です。

歯周病の人がインプラント治療を受けるリスク

歯周病の方がインプラント治療を受ける場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?

インプラント体を埋入するための骨が足りない

歯周病によって顎の骨が吸収されている場合、インプラントを埋めるために十分な骨の量を確保できないケースがあります。

骨量が足りないままインプラント体(人工歯根)を埋めると、インプラントが抜けてしまう可能性があり、注意が必要です。

インプラント周囲炎にかかりやすい

お口の中にたくさんの歯周病菌がいるままインプラント治療をすると、細菌がインプラントに感染するおそれがあります。

インプラント術部が細菌感染した場合、インプラントが脱落しやすくなるインプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。

インプラント周囲炎の炎症が強い場合は、埋め込んだ直後でもインプラントの抜去が必要になるケースもあるようです。

インプラント術部の化膿

インプラントを埋め込む手術のあと、傷口が細菌感染してしまい痛む、腫れる、化膿するなどの炎症を起こす可能性があります。

また、歯周病治療を行わないまま歯を失った部分にインプラントを埋め込む治療をしてしまうと、途中で歯周病が悪化し治療部位以外の歯の抜歯も必要になり、インプラントの追加が必要になる、治療方針の変更が必要になるなどの問題が発生するケースもあります。

インプラントの歯周病とは?

歯周病によってリスクが高まる合併症のひとつに、「インプラント周囲炎」があります。

インプラント自体は人工のものなので虫歯になるわけではありません。

しかし、インプラントの周りの歯茎や骨が細菌に感染することで、歯茎が腫れたり骨が溶けたりしてしまい、インプラントが脱落しやすい状態になります。

これがインプラント周囲炎と呼ばれるもので、天然歯(自分自身の歯)でいう歯周病と症状が似ています。

インプラント周囲炎と歯周病を比べると、インプラント周囲炎の方が歯周ポケット(歯肉と歯の間にできる溝)が深くなり、出血しやすい傾向にあります。

インプラント周囲炎は、歯周病よりも強い炎症を起こしやすいものです。
歯周病がインプラントに与える影響を考えると、治療前に改善すべきといえるでしょう。

歯周病改善の目安とは

歯周病は、すぐに改善できるような治療方法はありません。

ではいつインプラントの治療ができるようになるの?と疑問に思いますよね。

歯周病は完治することのない病気と言われていますが、治療を一旦終了してインプラント治療を行う目安はある程度決められています。

その目安に向けて、歯科医院では歯石や歯垢など悪化させる原因を除去した上で、改善の経過を観察し、目安に達したらインプラント治療を開始する傾向にあります。

歯周病の治療は、歯科医院での治療のほかに患者さん自身での歯磨きも非常に大切であり、歯周病治療の進捗は患者さんによって大きく異なるのもこのためです。

歯周病が改善したと判断する目安は歯科医師の考え方によって異なりますが、一般的に歯周ポケット(歯と歯茎の間)の深さを測る「プロービング検査」が歯周病改善の目安として使用されています。

プロービング検査のほかに、レントゲンによる骨の状態の確認も併用されることが多いでしょう。

歯周ポケットが深いほど骨が溶けている、歯茎が腫れていることを示すため、歯周病が進行していると考えられます。

歯周病が安定状態にあるとされるには、歯周ポケットが3~4㎜程度になった時とされており、それ以上に深い場合は治療が必要な目安の基準です。

そのほかに、プロービング検査時に出血するかどうか、歯茎から膿が出ていないかどうかなども、歯周病の度合いを確認する検査とされています。

インプラント治療後も歯周病治療を継続しましょう

歯周病を安定しインプラント治療を受けた後も、インプラント周囲炎などにかからないよう継続して歯周病治療を受けることが大切です。

再びお口の中の細菌が増えると、インプラントの土台となっている骨が吸収されて支えきれなくなってしまう可能性があります。

インプラント周囲のメンテナンスのほかに、お口の中全体の歯周病管理をしっかり行うことが、インプラントを長持ちさせるためのポイントとなります。

具体的に「継続する歯周病治療」についてご紹介します。

歯磨き

一番の「継続する歯周病治療」は患者さん自身で行う毎日の歯磨きです。

お口の中には常に細菌がおり、歯には毎日プラークが付着します。
歯周病が安定している状態でも、お口の中の細菌が増えれば再度歯周病が進行してしまう恐れがあるのです。

そのため、歯周病が安定してからも、毎日の歯磨きの徹底は欠かせません。
インプラントの周りだけでなく、自分自身の歯や被せ物との隙間などもしっかりと歯磨きをしてくださいね。

「これで歯磨きができているのかな…」と不安な場合は、歯科医院で歯磨き指導を受けてみるのもよいでしょう。

定期検診(歯周病検査)

定期検診やメンテナンスと呼ばれる、定期的なお口の中の経過観察です。
歯周病が悪化してしまっていないかどうか、お口の中に異変はないかどうかを確認するために通院しましょう。

毎日の歯磨きで歯垢を取り除きますが、歯ブラシが当たりにくい部分や、磨くことが苦手な部位には歯石が付着してしまいます。

歯石は歯周病の原因とはなりませんが、歯垢や細菌が付着しやすいため、取り除くことが必要です。

歯周病の状態が落ち着いてきたら、通院の間隔を3ヵ月や6ヵ月へ延ばすことができますが、インプラントを埋入したての時や、歯周病の経過観察期間は歯周病の状態を考慮したうえで歯科医師の判断で決定されるので、指示に従って通院してくださいね。

まとめ

歯周病の方はすぐにインプラント治療を受けられないケースもありますが、しっかり歯周病治療を行い、お口の中の環境を安定させることでインプラント治療を受けることができます。

インプラント治療が受けたいのに!と歯周病治療をせずにインプラント治療を行ってしまうと、インプラントの寿命が短くなってしまうかもしれません。

せっかくインプラント治療を受けるのであれば、少しでも長く噛みやすいインプラントでいたいですよね。

歯周病だと診断されたけれどインプラント治療できるかな…とお考えの方はまず歯科医院にてインプラント治療を希望されることを伝えたうえで、歯周病の検査を受けてみてくださいね。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。