親知らずが引き起こすトラブルと対処法とは

親知らずは、お口の中でトラブルの原因となることは知られていますが、何故トラブルを引き起こしてしまうのでしょうか。親知らずがお口のトラブルを引き起こしてしまう原因と対処法についてご紹介します。

更新日:2021/01/14

■目次

  1. 親知らずについて
  2. 親知らずってどうして生えるの?
  3. 抜歯が不要な場合
  4. 抜歯が必要な場合
  5. ■噛み合う歯が無い場合
  6. ■他の歯に悪影響がでる場合
  7. お口にトラブルが起きる前に抜いた方がいい人は?

親知らずについて

親知らずってどうして生えるの?

多くの人は永久歯が上顎と下顎に14本ずつ、全部で28本生えていると思われているでしょう。先天性欠損と呼ばれる、乳歯のあとに永久歯が生えてこない疾患をお持ちの場合は、28本より本数が少なくなります。
28本の永久歯のほかに、20歳前後に第二大臼歯の奥に生えてくる歯を親知らず(または、第3大臼歯や智歯)といいます。
上記のイラストでは8の第3大臼歯(智歯)が親知らずを示しています。


親知らずは斜めに生えてきたり、歯茎の中で横に生えてきてしまったり、元々無いことがありますが、それはヒトの顎の変化に原因があるとされています。
食品を加工せずに硬く大きいまま噛み切って食べていた大昔と比べ、食生活の変化によってあまり硬いものを噛まなくなるにつれ、ヒトの顎は退化して小さくなりました。
しかし、歯の大きさや本数にあまり変化しておらず、親知らずを含めた32本の歯がまっすぐきれいな歯並びで並ばなくなったといわれています。
変化に応じて親知らずが生えないヒトもいますが、親知らずが存在するヒトはスペースがない中で生えているため斜めに生えてしまったり、うまくお口の中に出てくることができず歯茎の中に横になって生えてたりしてしまうのです。

親知らずはすべて抜くの?

抜歯が不要な場合

お口の中にまっすぐと生えてきており、噛み合わせる歯がある場合はきちんと使えるため、抜歯の必要はありません。
歯茎や骨の中に埋まって生えている場合も、手前の第二大臼歯に影響を及ぼさない場合や、完全に埋まっており炎症を起こす可能性がない親知らずは抜歯を行わないこともあります。
また、下顎の親知らずの場合は、下顎にある神経や血管が通っている管(下顎管)を親知らずが抱えるようにしている、あるいは接して存在していることがあります。管を抱えるようにしている、あるいは接している親知らずを抜歯するためには神経を刺激、損傷してしまう可能性が高くなるため、抜歯が行われない傾向にあります。

抜歯が必要な場合

反対に、親知らずがまっすぐ生えてこず、斜めに生えていたり、手前の第二大臼歯を押すようにして生えてきている場合は抜歯が必要です。
既に数度炎症を起こして腫れや痛みを引き起こしている場合も抜歯が推奨されます。
特に手前の第二大臼歯を押すように斜めに生えてきている場合は、第二大臼歯との境目に虫歯ができたり、第二大臼歯との隙間に菌が入り込んで親知らずの周りが炎症を起こす原因となります。
また、噛み合う歯のいないケースでは、そのままにしておくと親知らずがどんどんお口の中に伸びてきてしまい、頬や舌を噛んでしまう原因となるため抜歯を行う場合があります。

お口の中で起こるトラブル

生えるスペースが小さく、斜めや横に生えてしまった親知らずは、歯ブラシをきちんとあてて清掃することが難しくなります。磨き残しは、虫歯や歯周病の原因となります。
磨けない状態のまま放置しておくと、身体の抵抗力が落ちた時に急に親知らず周辺の歯茎が炎症を起こして痛みを伴い、口を開けることができなくなる可能性があります。

■噛み合う歯が無い場合

まっすぐに生えた親知らずでも、噛み合う歯が無ければ、対する歯茎(上の親知らずなら下の歯茎、下の親知らずなら上の歯茎)にあたるまで伸びてしまうため、痛みを引き起こすことがあります。
お口の中で歯が伸びてしまっていると頬や舌を噛んでしまう原因ともなります。

■他の歯に悪影響がでる場合

親知らずがまっすぐ生えないために、手前にある第二大臼歯のブラッシングが難しくなり、虫歯や歯周病の可能性が高くなったり、親知らずが第二大臼歯を押してしまい、歯並びを悪くするなどの悪影響をもたらすことが考えられます。
また、親知らずと第二大臼歯の境目の部分の清掃が難しく、隙間から虫歯になってしまったり、親知らず周りの炎症を引き起こす原因となります。

■治療に悪影響がある場合

矯正治療やインプラント治療を行う際に、親知らずがあることで、歯並びや噛み合わせに悪影響がでることが考えられます。
治療前の検査の結果によって、親知らずの抜歯を指示された場合は指示に従って抜歯を行いましょう。

お口にトラブルが起きる前に抜いた方がいい人は?

親知らずが、お口の中で悪影響をもたらす懸念がある生え方をしている方は、お口のトラブル・症状が出る前に抜いておくことをおすすめいたします。
その中でも下記に該当する方は、早めに歯科医院に相談し、検討されてはいかがでしょうか。

■受験や仕事で忙しい人

疲れ・ストレスや風邪などの体調不良によって、親知らず周辺が炎症を起こし腫れたり痛みが出ることがあります。炎症が起きた場合、痛み止めの麻酔が効きづらくなるためすぐに抜歯することができず、抗生剤を服用し炎症が治まるまで待たなければいけないケースもあります。強く痛みが出ているときは、麻酔だけでなく、痛み止めの服用薬も効きづらいことがあります。

■結婚式を予定している女性

結婚式を予定している場合は、準備やいつもと生活リズムが狂うことにより親知らずの炎症を引き起こす可能性があります。
下顎の骨に埋まっている親知らずを抜歯すると腫れが出やすくなるため、余裕をもって親知らずを抜歯しておくことで、痛みの心配もなく、結婚式を安心して迎えることができます。
抜歯を検討している方は、結婚式の1ヵ月前にはすべての親知らずを抜き終わっているようにしておきましょう。

■妊娠を予定している方

妊娠した場合、親知らずが炎症した場合や抜歯後に抗生物質や痛み止めを飲むことが困難になります。
また、お子さんが生まれてからは歯科医院への通院の時間がとれなかったり、痛みに耐えて育児や仕事を行うことにストレスを感じやすくなるため、事前に抜歯しておくと安心でしょう。

このように親知らずは、生え方やお口全体の状態によって、「抜く・抜かない」の判断が異なります。ライフスタイルの変化によって、その判断が変わることもあるので、日頃よりかかりつけの歯科医院で定期的な検診を受け、相談しやすい環境をつくっておきましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。